令和5年6月分 金剛寺住職法話集


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5月に入り、70代の男性が他界を。葬式で拙僧(導師)入堂中、座席においてお孫さん達が声を出して、泣き止まない姿が。「只今より、故〇〇様の葬儀、告別式 • •」なる司会者の声が掛かるその前に拙僧、後ろを振り向き「ほれ、君ら、こっちに来てごらん」と棺桶の前にお孫さん達を手招きして「ほら、爺ちゃんの顔を見てごらんよ。見れば見るほど、よう死んどろうが。こんな安らかな顔して死なれちゃ、笑って送るしかないじゃろ」と。この言葉で会場内の雰囲気が一変した。「さあ、爺ちゃんの人間卒業式(告別式)をおっ始めっかな。『爺ちゃん、有難う。お疲れ様。また、会いましょう』と送らにゃぞ」と言うと、お孫さん達に笑顔が。

葬儀が終わり、いつもの様に会葬者に向け、法話を始めようとすると、お孫さんの1人(小学生男子)が「住職さん。ほんとにあの世(浄土)って、あるんですか」と問い掛けが。「さあ、拙僧は、死んだ事がないからな。あるかどうかなんて、わからんわい。わからんが、君にとって、あの世(浄土)は、あった方がいいのかい、ないでもいいのかい」と問うと、難しい顔をしていたので「じゃ、わかりやすく聞こうかな。また、爺ちゃんに会いたいかい」と問うと「そりゃ、会いたいよ」「そうか。なら、君にとって、あの世はないと困る、という事だな。『人間、死んだらそれで、全てが終わり』では、あまりにも寂し過ぎるよな。『あの世は、絶対にある』と信じた方が、先の楽しみがあって、よかろうばい」「そうだよね」「それとくさ、君が供える線香は、爺ちゃんのご飯だから、これからは、しっかり届けてやれや」「わかった」と、このお孫さんが。

冠婚葬祭の仕事(デパート内)をしている知人女性が「住職、ちょっと聞いてよ。結納を買いに来る息子の母親が、お嫁さんになる女性の悪口をボロカスに。結構な割合で、こんな母親、多いですよ。その母親の悪口に対し、苦い顔をしている息子さんもいれば、母親ベッタリで、一緒になって、嫁になる女性の悪口を言ってる息子さんも。母親に仕方なく同調して、話を合わせているのか、ほんとに同調して悪口を言ってるのか、1時間も見ていれば、わかるもんですよ。私『この息子のお嫁さんになる女性よ、早く気付け、今なら間に合う』と心の中で。また、親の世話をしていない人達に限って、財産分与で欲ったらしい事を言っておりますよね。その様な場面にも、よく遭遇します。結果、家族、親族間で大喧嘩。この仕事をしていると、人間の浅ましい部分が、もろに見えてきます。こんな話も昨今、時々耳に入ってきます。住職も、いつも言っておられますが、通夜、葬儀は、故人への御礼報謝の儀式(法要)に間違いはないですよね。故人が生前中は、散々世話になっておりながら『もう、故人から、何もしてもらえないから、通夜、葬儀には行かない』と言う人達の言葉を昨今、耳にする事が増えてきて。驚くばかりですよ。自己中心主義も、ここまできたら、もう、あかんわ」と。

【追伸】

先日、檀家男性の13回忌の法要が。その法要後に、故人の思い出話が家族、親族の間で。その座で子供達が「住職さん。父は大変な豪傑で『死』に対し、全くの無頓着でした。臨終する1週間程前、本人に『お父さん、安らかに永眠して下さいね』と声を掛けると、父は眉間にしわを寄せて『わしが安らかに永眠出来るかどうかは、お前達の生活態度次第だわ』と。まあ、そりゃ、そうだろうけど、あんな場面で言わんでも、と当時は。が、今思えば『お前たち、仲良くやれよ』と、釘を刺したんでしょうね。ほんと、面白い父でした」と。

【先祖】

現在、5月初旬に他界(82歳男性)された檀家さんの7日、7日の追善供養にご自宅の方へ。その折に奥様が「住職。私ね、先祖って、おられると思うんですよね」と。「何か、そう感じた事があったんですか」と返すと「平成17年の4月25日、福知山線の脱線事故があったでしょ。当時、あの時間の電車に乗って、息子が通勤を。が、その日に限って乗り遅れ、運良く事故を避ける事が。偶然と言われれば、それまでですが。私はそれを『偶然の事』と片付ける事は出来ませんでした」と拙僧に。対し、その奥様に「福知山線脱線事故は、拙僧にも不思議(偶然)話が1つあります。檀家の親戚筋の娘さんは、幼稚園、小学校、中学校、高校と、全て皆勤賞。その当時、京都の短大への通学は、この福知山線で。乗る車両はこだわりが強く、必ず、最も事故死傷者が多かった2両目に。その日の朝、その娘さんが酷い腹痛状態に。それでも京都の短大に行こうと。『学生時代は、全て皆勤』にこだわっていたので。が、到底無理と娘さん、泣く泣くその日(事故の当日)は欠席を。事故の次の日、そのご家族も『確固たる確証はありませんが、先祖が助けてくれたとしか、思えませんので』と、わざわざ北九州の拙僧のお寺(本家菩提寺)まで御礼報謝に。『どこにこの有り難さ(喜び、ご恩)を向けたらいいか、と考えたら、やはりご先祖かな』と言われてましたね。先祖のご加護があるかどうかなど、確証はありませんが、感謝する心を持つという事は、大切な事だと思いますよね」と、この度、ご主人を送られた奥様に。

【自殺】

年間に数人ですが「自殺をしたい」と訴えてくる若者がお寺に。が、気持ちを伝えてくる若者達は、まだどこかに「生きていたい」という心が。「私の事を誰も知らない場所へ行きたい」と訴える彼らに、拙僧「わざわざあの世に行かなくても、君の事を誰も知らない場所は、君の心が癒される場所は、日本国内にも、きっとあると思うよ。まずは、その地を探して、やり直してみるという手もある」と。この対話で、自殺を思いとどまった人(相談に来た人)は、何人もいましたよね。死ぬ事(自殺)を決定している人は、他人に邪魔をされたくないから、決行するその日まで、誰にも気付かれない様に行動を。この様な話を投稿すると「自殺を防止する方法はないのですか」という問い掛けが。なかなか難しい課題ですが、その質問者達に「子供は幼い頃から『これは何、あれは何』と疑問を親にぶつけてきます。最初の頃は丁寧に答えてあげていた親も、それが長くなってくると、面倒臭くなってきて、適当な対応に。子供の疑問、抱える問題は、年齢を重ねる内に、切実な問題に変わってきているのに、親は「そんな事、後でいいでしょ。今は、忙しいの」とあしらう様に。それが続くと、子供は親に頼る事をやめ、親に不信感を持つように。相談相手を失った子供は、解決されてない不安が心に溜まり続け、最後は悲しい結末に。拙僧の経験(相談を受けた)では、この様なパターンが、多いような気がします。

お寺に縁(ゆかり)が深い子供達(幼い頃からお寺に慣れ親しんでいる)なら、家族、友人、先生の中に話す相手がいなくても、お寺に行けば、話を聞いてくれる住職がいる、と。わが寺には、そんな子供達が何人もいます。お寺に限らず、話を聞いてくれる人が、周囲にいるか(あるか)、いないかでは、最悪の状況を回避するに、大きな違いが。因みに、新型コロナ感染拡大後の小中高生の自殺者が、2020年には、499人(小14人、中146人)。2021年には、473人(小11人、中148人)。2022年には、過去最高の514人(小17人、中143人)になったと。自分の事だけで精一杯だったここ数年、周囲に自分の思いを話せる相手がいなかったんですかね。人間関係が希薄になってきた昨今、これは大きな社会問題ですよね。

【追伸】

檀家の野球少年(小学生)が「住職さん。お釈迦さんは、何度も、何度も、生まれ変わって、やっと、仏教を開くまでの偉人になったんでしょ。たった1度生まれただけで、世間が驚く様な偉人になんて、なれるはずがないですよね。恐らく、大谷翔平さんも、何度か生まれ変わって、今の位置まで辿り着いたのかも。住職さん、僕、わかってるよ。失敗を、努力を重ねないと、それなりの人物にはなれないって事ぐらい」と。拙僧の法話を聞いている檀家の子供達は、時折り、「ほう、ほう」と感心させられる言葉を返してきます。

天徳山 金剛寺

ようこそ、中山身語正宗 天徳山 金剛寺のホームページへ。 当寺では、毎月のお参りのほかに、年に数回の大法要も行っております。 住職による法話も毎月のお参りの際に開催しております。 住職(山本英照)の著書「重いけど生きられる~小さなお寺の法話集~」発売中。