令和5年10月分 金剛寺住職法話


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檀家の小学生男子12歳が「住職、父さんが『夏目漱石の、吾輩は猫である、を読んでみな』と言うので読んでみた。その中に『人間ほど、ふてい奴はいねえ。人(猫)の獲った鼠を交番に。五銭を懐に入れやがる』という面白い言葉があったんで、父さんに『これ、何の事よ』と尋ねると『お寺の住職(拙僧)に聞いて来てみな。お前さんが興味を抱く様な、面白い話が聞けるかもしれんぞ』と言われたので来た。ねえ、教えてよ」と。

対し拙僧、この小学生に「1894年に香港で発生したペストが、1899年に日本に上陸した。その時に対応したのが、ペストの原因菌を突き止めた、北里柴三郎という医師だった。ペストは鼠、犬などを宿主に、蚤(ノミ)が媒介して、人に伝染する病気でね。よって『鼠の駆除』を北里医師が提案したところ、商売人(商売繁盛所縁の鼠)さん達から『鼠は、神の使いじゃ。駆除など許さん』と猛反発が出た。それがペストを日本国内に広めた原因の1つになったようでね。そこで北里医師は考えた。『鼠1匹5銭で貰い受ける』と世間に公表した。すると、次の日には、数千匹の鼠が届けられたんだと。『人間は、神の使いよりも、目の前の銭に飛びつく』と北里医師は、人間の習性に目を付けたんだね。これでペストが減少の方向に向かったんだと」と。

対し、小学生が「なるほど、頭がいいね、北里先生は。夏目漱石さんの『5銭』というは、その事を書いてたのか」と。「まあ、そういう事だわな。人間という生き物は、大なり小なり、自分にとって都合の悪いものを押し付けられたら、必死になって抵抗しようとする。が、その都合の悪いものが、良いものに変わった途端に、コロっと態度を変えよる。人間って、面白い生き物だろ。全ての人が納得出来る政策なんて、そんなもの、絶対にないよ。全てが、シーソーだよ。片方が上がれば、片方が下がる。そのバランスをとるのが、政治家さん達の仕事かな」「国会も、学校の学級会も、そう大差ないんだね、住職」と、この小学生が。

続けて、この小学生が「ペスト(黒死病)の話ですが、他に何か面白いもの、ありますか」と。「ペストは6世紀に発生し、最も酷かったが、当時の世界人口4億5千万人のうち、1億人が感染死したといわれる14世紀だよね。ユーラシア大陸の移動(人の流れ)の活発化もあって、中国に攻め込んだモンゴル軍が、ペスト菌を媒介する蚤(ノミ)と鼠を、欧州に齎したが原因の1つであったと言われているよね。黒海まで攻め込んだモンゴル軍だが、その時、兵士が次々に原因不明の病死を。何かの感染病と推察したモンゴル軍が、大きなパチンコを作って、感染死した兵士を次々に、敵国に投げ入れたと。この行為が感染拡大になっていったとの事。まあ、何せ、14世紀の事だからね、どこまでが真実かはわからん。その時に記され、残っている文献(資料)も、誰が書いた物か、誰(当時の権力者など)に書かされた物か、それによっても、大きく食い違うだろうからね。これが本当の話だとしたら、人間ちゅう奴は、ほんと、救いようのない生き物、という事になるわな。思えば、人間の歴史は、殺し合いの歴史にて。今現在も途切れなく、それが続いとる。人間を1番殺している生物は『蚊』と。人間を2番目に殺している生物は『人間』と。石川五右衛門さんが辞世で『浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ』と言ったこの言葉は、恐らく永遠に続く真理だろうね」と。

続けて、この小学生に拙僧「感染拡大した理由には、他にもこんな事が。鼠を駆除してくれる黒猫を、欧州の人達は『魔女の使いであるこいつら(黒猫)のせいだ』と勝手に決め付け、大量殺戮を繰り返した。この時、同時に魔女狩りというも行われたと。フランスのジャンヌダルクさんも、魔女狩りにあった1人にて。人間というは、原因不明、解決不能の恐怖には、何かの(誰かの)せいにして、心だけでも安らぎを求めようとする。所謂『スケープゴート、身代わり、生贄(いけにえ)』と言われるものだよね。知識がないというは、ほんと、悲しいもんだよな。これは余談だが、この一連の事により、欧州の人達が黒猫を不吉と感じるは、何となく理解は出来るが、全く因果関係のない日本人が『黒猫が前を通るは不吉』と黒猫を嫌うは、何とも滑稽な話でしかない。何でもかんでも、外国の真似をするからね、日本人は。まあ、今の時代にそんな事(黒猫は不吉)を言う様な人は少なかろうが。13日の金曜日を嫌がるも、同じ事だよね。拙僧周囲の人達も、何故か、その日を避けてるもんな。『何なんだ』と思っちゃうよ。日本人にとって、この13日の金曜日は、何の関係もない事なのに」と。

【こんな疑問を中学生が】

読者の中学生が「住職さんは、松尾芭蕉さんが『閑かさや、岩に染み入る、蝉の声』って詠んだを知ってますよね」と。「ああ、知ってるよ。山形県(出羽国)の立石寺に参詣(1689年7月13日)した時に、詠んだといわれている句だろ」「友人との間で『この蝉は、何の蝉かな』と討論になったんだ。住職は、何蝉だったと思う」と。「ほう、そんな疑問を持ったのか、君らは。素晴らしいな」と。「兎に角、住職の見解を聞かせてよ」と。「この句を芭蕉さんが詠んだは、初夏の頃だろ。なら『クマゼミ』や秋ゼミの『ツクツクホウシ、ヒグラシ』は消えるよな。残るは『ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ』かな」「僕らもその結論になった。それから先がなかなか、絞れないんだよね」「そうだよな。その時代、その時代の気象変動によって、生態系が変わるもんな。拙僧の子供時代は、九州でミンミンゼミは、鳴かなかったもんな。が、数年前の夏から、北九州でも鳴き出したもんな。こうなったら直接、松尾芭蕉さん本人に聞くしかないで」「そらそうだ。なら、住職。芭蕉さんに、先に、聞いとってくれませんか。僕らより先に、あっちへ逝くでしょ」と。

芭蕉の『閑けさや、岩に染み入る、蝉の声』の何蝉論争は、実は、斎藤茂吉の解釈が発端で勃発したものだそうで。斎藤茂吉さんは『アブラゼミ』と言ったが、小宮豊隆(漱石門下)さんは「岩に染み入る、とくれば、声は細く澄んでいて、糸筋の様な印象が。なれば『ニイニイゼミ』だったと考える方が自然かと」との見解を。

この読者の中学生男子が最後に「住職さん、話はコロッと変わるけど、あまり親しくないクラスメイトが、教室の中で大きな声で『うちの家は、爺ちゃんの骨は、火葬場に捨て置いてきたぞ。これだと、お墓も納骨堂もいらん。費用が少額で済む、と親父がそう言ってた』と、さも自慢げに。恐らく、訳もわからず、親の言葉をそのまま言ってんだろうけど。住職の法話で、この様な話は聞いてはいたが、本当にいたのには、驚いた」と。

対し拙僧、この中学生に「先日、とんでもない夫婦が相談に来てね。聞くと「親の遺骨を生ゴミ置場に捨てた。それ以後、子供の犯行が酷くなり、高校にも行かず、街を徘徊するように。親の祟りと思うので、供養をしてくれませんか」と、まあ、こんな話たい。『そうすりゃ、そうなる』の典型だよ。『親を悪霊にする前に、何か、考えにゃならん事が、あなた達にはありゃせんですか』と、その夫婦に。後日、その子供(17歳)さんから電話があって『両親は突然、僕が不良になったと思ってますが、僕は親に対する態度以外は基本、何も変わっておりませんよ。僕が大好きだった爺ちゃんの遺骨を、生ゴミと一緒に捨てたんだよ、うちの親は。あとでその事を聞かされ、驚くと同時に怒りが込み上げてきた。ネットを見たら、遺骨の捨て置き事例が数多に。呆れ返った』と。気持ちはわかるが、親のそれと、不登校は別の話だぞ、と、その子に」「そうなんだ。住職さんが度々法話の中で『親が作った家庭環境で、その親が育てる。親に似た人間になる確率が高いは、当然の事』と。他にも『この親にして、この子あり』と。僕の学校には『モンスターペアレンツ』なる親が何人かいて、先生に言いたい放題文句を。その親の子供を見ると、やっぱ、将来の『モンスターペアレンツ予備軍』だわ」と。


令和 5 年 10 月分 金剛寺住職 臨時法話


読者高校生男子が「住職ね、僕の両親ですが、胡散臭い僧侶に『あなたが苦しいのは、先祖の祟り』と脅され、そこに行く度に高額供養料、祈願料を。何度お祓いに行っても、全く進展がないのに『おかしい』と気付かない親の方もどうかしてるよ。だいたい僕の親は、何でもが人に責任を転嫁する人達で『俺がこうなったは、あいつのせい、こいつのせい』と。いやいや、あなた達のせいだよ。原因が自分達にあると、本当はわかってるくせに、認めないんだよな。何かのせいにすれば、その場だけは楽になるからね。だけど、何の解決にもならないよ、生活態度を改めないんだから。先祖のせいなんかじゃないよ、自分達に問題があるんだよ」と。

続けて、この高校生が「お笑いの竹山さんがラジオで『人間が地球に現れて数万年に。悪人が悪霊になったと仮定しても、とんでもない数になってるはず。そう考えると、この世に出てくる悪霊の数が、少な過ぎだろ』とキレてた。この見解ですが、非常に納得なんだけど、住職、そう思わん」「だよね。拝み屋さんの数(所)しか、出てきてないもんな。拙僧の周囲には、未だ嘗て、1度も出てきた事がないんだよな、悪霊さん達」と。

更に、拙僧「悪霊を信じてる人達なら当然、閻魔も地獄も信じてるはずだよね。悪霊になる様な人(故人)なら当然、その地獄とやらで、閻魔と接見し、怒られてるはずだわな。その人(悪霊さん)がまた、性懲りも無く人間界に足を運んで悪さしてるを、閻魔は『おう、おう、やれ、やれ』と、見て見ぬ振りして好き勝手にさせてるのかな。もし、そうなら、閻魔の存在価値なんてないわな。という事はくさ、悪霊さんなんていない、という事だよ。『あなたの先祖が、あなた達(子孫)を祟っとる』と拝み屋さんに言われ、それを信じるという事は、先祖に祟られる様な事を、何かしでかしているから、自分に身に覚えがあるから、信じるのかな。何が哀しゅうして、我が子孫を祟る様な先祖などおろうかいや。先祖を愚弄するのも大概にせにゃ。あの世でご先祖達が『私がいったい何をしたというんだ。悪い事があったら、全部わしらのせいか』と、頭抱えてまっせ」と。

対し、読者高校生が「だよね、住職。ほんと、失礼だよね」と。返して、拙僧「中には『自分の先祖ではない悪霊が、襲ってくる事もあるんじゃないか』と返してくる拝み屋さんもいそうだが。昨今は、人間の世界でも『誰でもいいから、やっちまえ』が、ちらほらと出てきてはいるが、その昨今でも、襲う理由は『遺恨(うらみ)』が根本にて、自分と何の関係もない人間を襲うは、滅多にはない事。悪霊が本当にいたとしたら、の話だが、彼らの世界でもそうじゃないのかな。全く縁もゆかりもない人を、悪霊さんが、祟る理由がないわな」と。

続けて、この高校生に拙僧「だけどさ、ここのところ、昔と比べて随分と夏の風物詩である、幽霊関連のテレビ番組が減ってきたんだよね。日本人も大概気付いてきたのかもしれないね、先祖を愚弄する様な事は、失礼な事であるという事が。それか、その手の番組に飽きてきたか、だね。テレビ局側も、視聴率の取れない番組は、作らないもんな。今年の4月、第210回の国会で罰則(懲役、罰金)を含む法律『不当寄附勧誘防止法』が成立し、施行される事に。『悪霊、先祖が祟っとる。除いて欲しくば、金を出せ』を出来なくさせる為に。やっと、やっと、信仰界にメスが入ったよね。この手の相談だが、今日までに拙僧、どれ程に受けてきただろうか。この法律で少しは、被害に遭う人が減るかもしれないね。今から1100年前、室町時代に一休宗純さんが『欲を捨てよ、という側から、拾うてまわる寺の坊主』と言ったとか、言わなかったとか。まあ、でも、一休さんなら言いそうだけど。その時代から坊主は既に、そうだったんだろうね。石川五右衛門さんの『浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ』も同じ意味合いかな」と、この高校生に。

さて、次の様な話(相談)も、年に1、2回、拙僧のところへやって来ます。先日も、ある拝み屋さんから「この家は、不動明王を祀っておろうが。その為に、家の中に入れんと、お前の先祖達が玄関先で怒り狂っとるぞ」と言われ、高額お祓い料を支払い続けている、という婆様が、拙僧の寺へ相談に来られました。その婆様に「拙僧のお寺に来る時、その怒り狂ってる先祖達が、待ち構えている玄関を出てきた訳ですが、何かされたね、その先祖達に」「いや、何もされなかった」「そうね。じゃ、この話は終わりでいいね」と。

【余談】

これは、今年の8月下旬の話です。拙僧の知人が「住職、仕事で福井に行くなら、東尋坊には寄るの」と。「寄れたらいいね」「東尋坊は、自殺の名所なんでしょ。霊に祟られるんじゃないですか」と。「あのさ。何で、いつも、いつも、そういう発想になるかな。悲しく亡くなって逝かれた人に、更に、追い打ちを掛ける様な、心無い言葉を投げ掛けるは、やめや、と言ってるでしょ。福岡世界水泳で27Mのハイダイビング競技があったが、日本の参加選手はただ1人で、日本人では初参加だったらしいよ。その参加選手が、練習場所がなくて、東尋坊で高飛び込みの練習を。もし、霊がそこにいたとしたらくさ、応援してくれてるよ」と。対し、この知人が「自殺された人達が、応援するんですか」と。「あのね、霊がそこにいたと仮定の話だよ。辛い思いをして命を絶たれた人達が『自分と同じ目に合わせてやる』なんて考えるもんか、目の前で懸命に頑張ってる人に対して。『怪我をしない様に』と、見守ってくれてるくさ。それと、様々方々から文句が出てきそうだから、付け加えておくが、東尋坊を練習場所として選ばれたも、国内に27m(ビル9階相当、着水時速87キロ)の飛び込み台と、それを受け止められる水深のプールがない、が理由だったとの事らしいよ。それに、当然、東尋坊で練習する許可も取られてるくさ、自殺名所のだよ」と。因みに、荒田恭平さん(当年27歳)の福岡世界大会の成績は、20位だったそうです。日本人初の挑戦だからね、ご本人もこれからですばい。

因みに、2004年4月から、東尋坊での自殺防止のパトロールを目的に、有志団体(元警察官など)が NPO 法人(詳細はググって下さい)を立ち上げたとの事。初期の10年間の平均自殺者数は、年に約25人だったそうですが、現在は、半分以下の10人程度にまで減少してきたとの事。事前に自殺防止が出来たは、18年間で745人と。この話(東尋坊関連)は、X(元Twitter)のみに投稿した法話ですが、当人の荒田恭平さんから、投稿後に即「取り上げて頂いて有難うございます。東尋坊の印象も変えられるかな、と思って」と、ご丁寧な返信メールを頂き、びっくり致しました。偶然でしょうが、読まれたんでしょうね。『東尋坊は、高飛び込みの練習が出来る場所』と世間に知れ渡ったら『なんだ、自殺が出来る場所じゃないんだ』と自殺志願者も多少は、足を向けなくなるかもしれませんよね。印象(自殺の名所)を変えるというは、大事な事ですよね。

【読者からの問い掛け】

読者が「住職は、脅し信仰に関する相談事が多いみたいですが、どの系統が多いですか」と。対し、拙僧「ポピュラーなのは、やはり『信仰を止めたら、何年以内に、死ぬぞ、病気になるぞ、大怪我するぞ』などの脅しかな。『人間の死亡率は、100パーセント』なんだよな。拡大解釈すれば、そりゃ、いつかは、当たるわな。が、釈尊も、達磨も、各祖師も、脅して導いたなんて話、聞いた事ないよね」と。

【余談】

中国が日本からの魚介類を全面輸入停止した事について、読者達から怒りメールが続々と拙僧に。対し「先日、専門家が『別に慌てる事はない。年間約1700億円の損失というが、日本人が全員、1ヶ月に1回、回転寿司で1皿(150円以上)多く食べれば、1ヶ月に1回、魚を1匹多く買ってくれば、補える額にて』と。まあ、それでも、中国人であれ、日本人であれ、心配する人は、一定数は存在するでしょうから、政府はそれなりの説明をしていく事は大事だろうが。漁師さん達にとっては、死活問題であるに、間違いはないでしょうから」と。この質問を多くいただいたものですから、参考までに書かせていただきました。因みに、中国は、日本の10倍以上の濃度の処理水を、日本海と東シナ海に。その海の魚をずっと私達は、口に入れてきたんだけどね。

天徳山 金剛寺

ようこそ、中山身語正宗 天徳山 金剛寺のホームページへ。 当寺では、毎月のお参りのほかに、年に数回の大法要も行っております。 住職による法話も毎月のお参りの際に開催しております。 住職(山本英照)の著書「重いけど生きられる~小さなお寺の法話集~」発売中。