令和5年12月分 金剛寺住職法話

       

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今年もまた、いじめ問題がありましたね。大津市の中学2年生男子が、いじめによって自殺されたがきっかけで『いじめ防止対策推進法』が成立して、今年で10年に。その中学生の父親が先日、テレビで「あれから10年になりますが、いじめ問題はなんの進展も。わが子の死を無駄にしてもらいたくない」なるニュアンスの言葉を涙声で訴えを。2021年に認知された『いじめ』について、児童1000人当たりの件数を毎日新聞が調べたところ、33自治体の間で、約30倍の差(いじめ件数)がある事が判明しましたね。これは『認知されたいじめ』が少ない自治体では『いじめ』が見逃されているのではないのか、との専門家が見解が。

『いじめ防止対策推進法』が出来た頃、今から約10年程前の事ですが、東京から「死にたい」と言う13歳の男の子を連れて、両親が拙僧のところ(寺)へ相談に。話の流れから、この子の父親が「住職は、転校しろ、と言われるが、次の学校でも『いじめ』にあったら、どうするんですか」と。対し「また、転校すればいい」「更に、次の学校でもいじめられたら」と詰め寄るので「安息地が見つかるまで、何度でも転校すればいい」と。「それじゃ、こいつ(自分の息子)は、何に対しても逃げる様な人間に」と父親が。「あなたの息子が自殺した後で、そんな言葉をまた、吐けますかい。拙僧は『逃げろ』と言ってる訳じゃない。『自分の命を守りな』と言ってるだけです。何度注意をしても、そのいじめっ子達に聞く耳などはない。自分がいじめの対象になって、辛い思いをしないとわからん。人は教えられても、身に付かん。人は気付かにゃ、身に付かん。こんな『いじめ』をしてくる人間に、自分の命(人生)を代償にしてまで、付き合う必要などない、と言ってるだけですよ。人間は1度死んだら、2度と生き返ってはこれませんよ」と、この父親に。その3ヶ月後、この13歳の男の子から嬉しそうに電話があり「次の学校で楽しい学生生活を送っています」と。父親は拙僧に相談に来た後、東京に帰って、即、転校手続きをとり、自分は1人東京に残り、母親と息子さんを他地域の学校へ。その父親も電話に出てこられ「息子の変わり様を見て、転校をさせたは正解であった、と思いました。有難うございました」と拙僧に。

拙僧のところ(お寺)へ、これまでに来られた自殺相談者は、檀家内外を問わず、少なからず。相談に来る人は『まだ生きていたい』という気持ちが。よって、自殺に至った人は運良く1人も。が、相談に来なかった檀家の中には、今日までに約10人程がその行為に。相談出来る相手が『いる、いない』だけでも、大きく結果が違ってくる様な気がしますよね。拙僧に相談に出来ず、自殺に至った檀家の中高生は、いじめではなく、大半が親子(家庭内問題)関係でしたね。因みに外国では、いじめっ子の方を転校させる方策が、取られている国もあるとか。何故か、どうしてか、日本は被害者よりも、加害者の方を擁護する傾向が。ただ単に、幸せな人生を望んでいただけの人の命を、死ななくてもよかった人の命を、そんな人の将来(未来)の全てを奪ったのに。

教育委員会から依頼を受け、拙僧、講演に呼ばれた事が何度か。その時、参加の教諭陣に「わが寺の檀家には、先生(同僚)達からのいじめを受け、精神疾患となり、休職して長期入院した男性が2人おります。『いじめはするな』と生徒を指導している先生達が、先生間でいじめを。これ、どういう事ですかい。2019年に起こった『神戸市の教師いじめカレー事件』は、まだ、記憶に新しいですが。まさか、この会場にそんな先生は、おらっしゃれんとは思いますが。報道で『いじめ』の事件がある度に、校長先生(学校関係者)が『いじめがあってるとは、知りませんでした』なる釈明が。いやいや、それは如何なものかな。拙僧は若い頃に毎年、お寺で夏休みの林間学校を。その短い期間でも、いじめが行われているは、結構認識出来ましたよ。いじめられている子供から、大人にモールス信号(目で訴え)が必ず発せられてますから。報道で発表される『いじめ』で自殺された子供さんの遺書には『先生に何度話しても、真剣に僕(私)の話を』の言葉が度々出てまいります。人は、長い人生の中で、人から必死に助けを求められる事って、そう度々ある事ではないですよ」と先生達に。続けて、拙僧「大半の先生は恐らく、真剣に子供達と向き合う教育熱心な先生ばかりかと。昨今、聞くところによると、先生達があらゆる面で、精神的、肉体的に、追い込まれているとの事。わが寺の檀家で先生をしている50代男性が『住職さん、先生によっては、2年も、3年も、1年間1日も休みがなかった、という先生も』と。『クラブの顧問ですか』と問うと『はい。高校では既に、クラブ活動の指導者は、外部の人が。ところが中学では、まだ、先生が担当するが主流。クラブ活動以外でも、業務が多過ぎて、帰宅時間が22時、23時になる先生達も。この過酷な職場環境で、精神をやられる先生もおれば、家庭を崩壊させた先生も。おまけに、理不尽な文句を言ってくる、モンスターペアレンツなる親の対応も。私の知人教諭には、1日に何度も、酷い時には夜中まで、自宅の電話にギャーギャー文句を言ってくる親がいて、遂に精神疾患となり、休職に追い込まれました。いじめを黙認するは、そりゃ、いかん事ですよ。が、先生達は精神的に、いっぱいいっぱいの状態なんですよね。国は早く、仕事の分担化に着手しなきゃ、教育現場そのものが崩壊する事に。近頃では、先生という職業に若者が魅力を感じなくなり、競争率(教諭志願者)も低下を。どの職業でもそうでしょうが、競争率が3倍前後になると、間違いなく質が落ちてくる。どうにかならんもんか、と様々思案しながら、頭を抱えております』と、檀家で中学の教員をされている男性が、そんな事を言ってきましたよ」と、この講演で先生達に。

更に拙僧、この講演で「わが寺の檀家の中には、保育士の免許を取得しておりながら、他種の仕事をしている人達が。理由は様々なれど、日本全国にそんな人が30万人も。某代議士に拙僧『教員免許と保育士の免許を統一して、小学生の担当も、幼児の担当も、出来る様にしては。幼稚園、保育所を新たに設立の話が出た途端に『煩くなる』と住民から反対の声が。なれば、最初から子供の声が聞こえている小学校に設けたらどうですか。少子化で、教室が余りに余ってるんだから。昨今は世の中が物騒だから、兄弟がおれば、登下校も安全だし。これは、大雑把な提案ですが、一考してみる価値が。『異次元の少子化対策』の声もあがってるようだし、と進言させてもらった事が」と。因みに、大戦前後に活躍の小説家、坂口安吾の『堕落論』は逆説的表現が興味深い。「仏教の必要性を考えた時、坊主が必要なのであって、寺が必要なのではない。説法を聞かせてくれる『良寛』あってこそ、寺の存在価値が」と。これは、学校、病院、会社など、如何なる組織にも通ずる事。つまりは、人材。

【余談】

コロナの影響で講演の依頼が約3年、途切れておりましたが、有難い事に今年は3度も依頼を頂けました。10月12日の講演の主催者は、福岡県民主医療機関連合会(福岡、佐賀民医連)さんと、公益財団法人健和会さんからの共同依頼でしたが、オンデマンド撮影による形式で、系列の看護師さんと、カメラマンさん達が10人ほどお寺へ足を運ばれ、拙僧を囲んで行われた法話の映像が来年、福岡県内、佐賀県内の全ての病院、看護師協会、老人ホーム、などに(法話時間3時間)流されるとの事です。SNSなら、確実に炎上する話を幾つかしましたので、その部分は映像から外してください、と頼んでおりますが。だけども、炎上するだろう話の方が、間違いなく面白く、教訓になるんですけどね。コロナ前、県内の看護師協会さんには何度か、講演に呼んでもらいましたが、その時、親の遺体を引き取りに来ない子供がいると、看護師さん達から聞かされ、大いに衝撃を受けたものでしたが、この度、またその事を尋ねてみると、今では、あの時期以上に、親の遺体を病院に捨て置きする子供達がいるとの事。子供がそうするには、そうするだけの理由があります。恐らく、そうされても仕方がない親なんでしょうね。が、遺体は自分の足で歩いて火葬場には行けない。子供が動かにゃ、誰か(第三者)に迷惑を掛ける事に。親子喧嘩に第三者は、何の関係もない。嘗て、ある男の子(14歳)が「住職さん。人間、死んだら、ゴミ捨てか」と吐き捨てた言葉が、今でも忘れられませんね。さて、さて、どうなるのやら、この国は。


令和 5年 12 月分  金剛寺住職 臨時法話


檀家で60代の男性が「住職、昨今、巷では、2040年問題なるものが物議を。少子化による急速な人口減少と、高齢者人口がピークに達し、あらゆる業種で労働力減少による人手不足に。労働者不足がなんと、1100万人になるとよ。1971年から1974年の第二次ベビブームに生まれた団塊ジュニア世代が、65歳以上の高齢になる年になるんだと。聞くところによると、50歳までに1度も結婚していない男性が3割、女性が2割もいるらしい。この状況が変わりなく進んでいくと、子供を産める年代の人間が、年々減少していくは、必然の成り行き。国の予想では、2060年の日本の人口は、約8600万人になると。A I 時代になると、労働者は要らなくなると言ってる人達もいるが、そんな単純な話じゃないと思うがな」と。対し、拙僧「40年後の日本の労働人口は、今より約40%減少するんだってね。具体的に数字で表すと、2020年の労働人口が6400万人に対し、2065年には約3900万人になるんだって。先日、京都へ仕事に行くと、タクシー待ちに30分以上。乗ったタクシーの運転手さんが『この3年間で京都は、運転手が2000人近く減少だよ。タクシー(車)はあるのに、運転手がおらん。外国人観光客は増加し、修学旅行生がタクシーを使うもんで、地元の人達(老人、病人、緊急など)が難儀をしてはる』と言われてましたね。まあ、コロナで先行き不安(生活面)と離職した運転手さん達が、戻って来ない、という理由もあるらしい。離職や採用難が原因で、人手不足で倒産する会社が。2023年の上半期に、累計110件(建設業、サービス業、運輸業、製造業など)が倒産したと。40年先、60年先の心配ではなく、近々の問題になってるようですね。如何なる事もそうだが『そうすりゃ、そうなる。そうなってきているのに、まだ、そうするか』だよね。少子化問題は、結局、自分で自分の首を絞める事に。新たな命が生まれて来なきゃ、様々な分野で継続が困難は、当然の事なのにね」と。

更に、この60代男性が「外国人労働者を雇えばいいじゃないか、と簡単に言う人達がいるが、国内環境がガラッと変わる(治安も含め)を、考えての物言いなのかな。今でこそ日本は、女性が夜中に1人で歩いても、まだ安全な国だが、恐らくその環境(安全神話)も、昔の話、となるやもしれん。つい最近、東京で、どこかの国の連中が、自国民同士で街中で大喧嘩を。人の庭(日本国内)で、喧嘩ばおっ始めよる。こんな事が今後、頻繁に起こり始めるんだろうな。私達(60代)が生きている間は、まだ、大丈夫かもしれんが、今の子供達が大人になった時代には、どうなってるんだろうな、この国(日本)は。『俺達は死ぬ。後は任せた、好きにしろ』と、自分達が作った世の中を、子供達に丸投げしてこの世を去るは、あまりにも無責任だと思わんか、住職。少子化問題は、全ての問題の根底だよ。世の中は人で成り立ってるんだ。人がいなかったら、A I なんてのも必要ないだろ。そろそろ真剣に考えんとあかん。産んで育つまでには、時間が掛かるんだ」と。対し、拙僧「武田信玄公の『人は城、人は石垣、人は堀』は、真理ですもんね。戦国時代の戦でも、何百人も何千人も人が死んだら、子供が大人になるまで待たないと、兵隊がいない状態に。第二次世界大戦後に日本は、僅か20年で世界第2位の経済大国に。その最大の功労者は、5人、10人、産んで、育てた、女性陣ですもんね。A I、A I というが、それを扱うも人間、それを監視するも人間にて。去年と一昨年、2ヶ国で飛行機が墜落、数百人が犠牲に。操縦室内でA I と機長が大喧嘩。その結果、機長の経験値よりも、A I の判断が優先され、墜落という結末に。将来はどうなるかは知りませんが、現在におけるA I の能力は、学習したものだけが知識にて。つまり、ただの『物知りさん』に過ぎん。アナウンサーの代理でニュースを伝えたり、国会議員の代理で文章を作成したりは、重宝するでしょうが、原子力発電所の管理を全面的に任せられるか、といえば、怖いものがありますよね。今現在においては、A I には、各々に人間が監視役として着いておかないと。人は、必要ですばい」と。

最後にこの60代男性が「まあ、将来の事は、将来の事として、今現在の人手不足を解消するには、人手を呼び寄せる手立てを工夫していくしかないわな。人手を呼び寄せるには、賃金アップしかないよな。が、中小企業はそれをする為の体力(資金)の問題が」と。対し、拙僧「ほんと、これは難しい問題ですよね。先日、耳にしたんですが、あくまでも、これは1例ですよ。米国では、例えば、Googleですが、何万人もの人達の首切りを。この言葉(首切り)だけを聞いたら『失業者がどれだけ出るねん』と思いますが、その首を切られた最先端のI T 能力を持った人達が、米国全土に散らばって、移った会社がレベルアップに繋がっているとの事。これ(能力の分散)が、米国経済の底上げになっていると。これをそのまま『推奨せい』とは言いませんが、様々問題がありそうですから。ただ、参考に出来る事例である事には、間違いないかも」と拙僧、この男性に。

【上記法話と関連話】

檀家の若者が「住職が偶に法話に中で『世の中を変えてきたは、少数意見側の勇気ある行動』と。ところで、住職は『センメルヴェイス反射』という言葉を知ってますか」と。「詳しくは知らないが、通説では、新事実(新たな見解)を拒絶したり、常識から説明出来ない事実を拒絶するっていう、あれでしょ」「よく知ってますね」「拙僧の息子は2人とも、鬱陶しい程の理系オタクですので。その手の話は、時々聞かされています」と。

この檀家の若者が「この主人公のオーストリアのウイーン総合病院産科の勤務医だった『センメルヴェイス・イグナーツ』さんは、あまりにも可哀想過ぎますよね。出産した母親達が産後、病気で死亡するケースがあまりに多いので、彼が個人で調べてみたところ、分娩担当医の汚れた手が原因(ウイルス)である事に気付いたと。その予防法として、カルキを使用した手洗いを提唱したところ、死亡が劇的に減少。ところが、彼の発見は多くの医師達から『母親達を産後に死なせたは、俺達の汚れた手が原因だっていうのか』と反感を買い、頭に血が上った医師達が、彼の指摘を批判したと。それでも彼は、その事の理解を広めようと行動するが、排斥に合い、精神異常者として精神病院に隔離されたと。そして、その後、精神科病棟から抜け出そうとして、守衛達から暴行を受け、その怪我が原因で、センメルヴェイスは死亡したと。今でこそ、医療行為においては、体全身を清潔にするが常識となっていますが、当時は、そうではなかったんですね」と。この檀家の若者に拙僧「数十年前の肝炎の広がりも、医療プロである医師の注射の回し打ちが原因の1つだったもんな。わが寺の檀家が多い漁村では、その注射の回し打ちで、大人も子供も多くが肝炎に。だからといって、当時の医師を責めてもいいか、となると、また、それはそれで、話が違う様な気がする。今でこそ、注射の回し打ちが危険だとは常識だが、その頃はまだ、それが解明されてない状況にて。誰かの犠牲があって、その分野に携わる人達の失敗があって、初めて、解明されていくものも、少なくはないですよね」と。すると、この若者が「河豚も、鰻も、きのこも、今現在において美味しく食べられておるは、それを食して大変な症状になった人達がおればこそ、ですもんね。この『通説にそぐわない新事実を拒絶する傾向』は、医学界に限らず、どの分野でも、いつの時代でも、見られる傾向ですよね。よく使われる言葉ですが、今ここに存在している『1』を『2』や『3』に進歩させるは、比較的スムーズに。が、何も存在してない『0』から『1』を見つけ出すは、容易な事ではないと。成功するには、失敗はつきもの。懸命に解明しようと努力している人達の足を引っ張る様な事だけは、私達は決して、してはいけないですよね。私達人類の為に、貴重な時間を費やして、解明しようとしてくれてるんですから」と。

【余談、子育て】

今年2月に拙僧夫婦、娘から初孫のプレゼントを。出産後、3月に東京へ戻ってより、正月に帰郷出来ないからと、10月初旬に孫を連れてお寺(北九州)へ帰省。新たな命の誕生と同時に、新たな親もまた、誕生を。育ててもらった経験しかなかった娘が、孫からしっかりと育ててもらって、随分と母親らしくなっておりました。親は子供を一方的に育てていると思ったら、大間違いにて。親は子供から、育ててもらってるんですもんね。因みに、医者は患者さん達から、先生は生徒さん達から、住職は檀家さん達、信者さん達から、育ててもらって一人前のプロに成長を。診てやってる、教えてやってる、育ててやってる、の心では、本当の成長は望めんかな。

さて、今年も残すところ、あと僅かにて。反省すべきところは、反省して、来年はよい年に。

天徳山 金剛寺

ようこそ、中山身語正宗 天徳山 金剛寺のホームページへ。 当寺では、毎月のお参りのほかに、年に数回の大法要も行っております。 住職による法話も毎月のお参りの際に開催しております。 住職(山本英照)の著書「重いけど生きられる~小さなお寺の法話集~」発売中。