平成29年11月分 金剛寺住職短文法話

  「坊主の説法と結婚式のスピーチは短いほど有難い」と。但し、その短文法話の中には必ず含み言葉が。講演会でよく次の様な質問を。「法話によって参加者全員が抱える問題を網羅することが出来ますか」と。対し私は「法話は話し手より聞き手の受け取りの方が大事。法話は数学で言うところの『公式』に同じ。その話に自身が抱える問題を当てはめ、自らが解決の糸口を導き出していく為の道具にするもの。これは法話に限らず、人と人との関係全てにおいて言える事にて」と説明を。その様に理解して頂きますれば、この短文法話も何かのお役に。

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0057  「ヤクザの親分さんも女房殿には頭が上がらないとか」

29年の結婚生活で2度ほど妻からマジ蹴りを、足に。堪忍袋の尾が切れたみたいで、未だ身に覚えが。しかし、かかあ天下と亭主関白を比べた時、絶対的に腕力の強い旦那の威張り腐った態度は見るに堪えんが、その強い旦那が奥さんに怒られて「シュン」としている姿を見るは、ほのぼのとしませんか。夫婦円満の基本はこれ。

0058  「人は失って初めて、本当に大事なものの存在を」

大便小便が出て、飯が食えて、睡眠が出来て、当たり前。が、この当然と思う事が出来なくなる事こそが最大の苦に。加えて本当に大事な物は目に見えん。親の心、子の心。酸素に太陽の恵み。わが命の基盤を作ってくれた先祖の存在と業績。この目に見えないものに感謝が出来る人間を育て上げる事こそが、親という者の役目。

0059  「物事は全て年齢と経験によって、受け取り方が変わる」

禅宗には、何十年もの間、一言一句違わぬ法話を貫かれる僧侶がおられると。「この話なら前にも聞いた」と不服を言う方に「人は刻一刻と変化を。抱える問題も日々変わる。今日聞いた法話と5年後に聞いた法話が同じに聞こえるということは、その人はこの5年、全く成長していないということ。それに気付かせるが為の手法。

0060  「女房殿の幸せが、旦那にとって何よりの幸せ、だよ」

思い出深い家も捨て、産んで育ててくれた親も捨て、今日までの経歴も、全てを捨ててあなたを選んでくれた女性を何故大事にしない。一度しかない人の人生を粗末に扱うなんて失礼千万。男性は重大な責任がありまっせ。基本、人は自分以外、第三者の人生は歩けない。その道を共に歩くと決意してくれた女房殿を何故大切に。

0061  「仏教行事の風評は、巷の恐怖観念から産まれてきたもの」

友引の葬式は誰かが連れて逝かれる、と。では、千人葬式したら千人が、ですか。四十九日法要は三ヶ月に股がったら苦が身『三』に付く『月』からするな、と。仏教ではそんなこと一言も。ただ、日本人は迷信、祟りの類に敏感。弔問者に嫌な思いをさせたくない、という理由からその日を避けるという考え方なら、有りかと。

0062  「誠意を見せねば、人は決して動いてはくれん」

先日、結婚を親に反対されている若者が「破談にした方がいいですか」と相談に。「ならやめろ、と言ったらやめるんかいな。2人顔を揃えてここに来たという事は、結婚したいからだろ。どうしたら親に許しを得られますか、と何故聞かん。そんなところじゃないか、両家の親が反対している理由は。現実逃避に明日はないよ」と。

0063  「全ての物に感謝出来ない人間は、使い物にならん」

松下電器の創業者幸之助さんは新入社員採用面接で「あなたはこれまで運が良かったと思うか、悪かったと思うか」と問うて「良かった」と答えた人だけを採用していたと。その理由は、数多の支えあっての今日のわが身。加えて今ここに命があるに何不足。感謝の心があれば必ずその答えが出るはずと。この確認方法は、正解。

0064  「壁に耳あり、障子に目あり。如何なる分野にも見識者あり」

Mー1でサンドウィッチマンが敗者復活から優勝した時、予選時の敗退審査に対しオール巨人師匠が不快感を。関係者全員大反対に対し当時長嶋監督は銚子商の篠塚さんをドラフト1位に指名。2軍で埋もれていたイチローさんを仰木監督が1軍へ抜擢。その人が本物なら、必ずその道に明るい人が手を。腐らず努力を怠るな。

0065  「人を追い込んで、何が楽しい。人を泣かせて、何が嬉しい」

人を絶対に追い込んじゃあかん。抱えきれる問題の数は人それぞれ。5つ抱えれば限界の人に5つ抱えさせたら、うつ病などの精神疾患を引き起こすことに。「この問題は急ぐことはないよ」と、たった1つ外してあげるだけで逃げ道が出来、心に余裕が。特に子育ては。親といわれる立場の人は、未熟だった頃の自分を忘れぬ様に。

0066  「子は親を、親は子を選べんが、子は親の後ろ姿でどうとでも育つ」

子供は良い事も、悪い事も外から吸収してくる。これは阻止出来ん。だからこそ家庭が濾過する役目の場所でなくては。芥川龍之介さんの「河童」では、生誕決定権は赤子の方にあるらしい。その赤子が「父よ、あなたの生き様を見ていたら、私もそうなるのか、と思ったら恐怖で産まれてきたくない」と。責任があるよね、親は。

0067  「固定観念が人の足を止める事に。日本の企業の99・7%は中小企業」

「一流大を出て一流企業」と洗脳のように言われ続けた青年が就職で初めて挫折、相談に。「印象派のゴッホは数千点の作品の中にひまわりがあるが、被写体には何の意味も。それが薔薇でも、百合でも。要は技法だよ」と。「わかった、畑だね」と。「そうだ、畑は何処でもいい。その畑で君が何を磨き、実らせていくかだ」と。

0068  「昔話は老若男女を問わず、いずれの世代にも教訓を」

2月の伝統行事に節分が。鬼の訪問は「鬼門」から。所謂、牛寅(北東)の方角。魔がこの方角から入るということで、魔「ま」を滅「め」っする、という意味から「豆」を撒き始めた。が、形がないと実感が。そこで牛の角をつけ、虎のパンツを。が、室町時代は豆ではなく桃を。そこで鬼退治の桃太郎伝説が。懺悔を促す方便。

0069  「誰にでも、何もかんも投げ出したい時って、あるよね」

家族問題に対し老いた母親が「私はもう知らん。後は死ぬだけじゃ」と。その投げやりな言葉に情けないと娘が。「それはお母さん、可哀想かな。若い時には背負えた荷物が、今はもう背負える精神力も体力もないんだよ。そんな風に責めなさんな。家族の幸せを願わん親なんていないよ」と。年寄り責めるな、行く道じゃ、かな。

0070  「善悪に関わらず、全ての縁は、突如わが身の前に」

龍樹菩薩が「この世は縁で繋がってないものは何一つない。偶然なる言葉は人間がつくった言葉だ」と。確かに「この道を通らなかったら。1日ずれていたら」と。「もし、あの時」を使いたくなる縁は多数。なのに、今日やらねば為らぬ仕事を先に延ばし「だってしょうがないじゃない」と人間は開き直る。今この時を大切に。

天徳山 金剛寺

ようこそ、中山身語正宗 天徳山 金剛寺のホームページへ。 当寺では、毎月のお参りのほかに、年に数回の大法要も行っております。 住職による法話も毎月のお参りの際に開催しております。 住職(山本英照)の著書「重いけど生きられる~小さなお寺の法話集~」発売中。