平成30年4月分 金剛寺住職短文法話集
「坊主の説法と結婚式のスピーチは短いほど有難い」と。但し、その短文法話の中には必ず含み言葉が。講演会でよく次の様な質問を。「法話によって参加者全員が抱える問題を網羅することが出来ますか」と。対し私は「法話は話し手より聞き手の受け取りの方が大事。法話は数学で言うところの『公式』に同じ。その話に自身が抱える問題を当てはめ、自らが解決の糸口を導き出していく為の道具にするもの。これは法話に限らず、人と人との関係全てにおいて言える事にて」と説明を。その様に理解して頂きますれば、この短文法話も何かのお役に。
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0127 「壁に耳あり、障子に目あり、防犯カメラの先にも」
銀行に来る度に駐車場警備員さんに「ご苦労様」と声を掛け、ちょっとしたお菓子や飲み物等を。この社長さんが資金繰りに困り、銀行に融資願いを。融資の決定はすぐに成されたと。何故か。この警備員さんとのやり取りを度々支店長がカメラ越しに眺めており、その人柄の良さを常々感心されていたとの事。これぞ当に陰徳。
0128 「何も言わなくても通じる関係。新たにこの関係を作るはしんどい」
日本には「女房と畳は新しい方が良い」という諺が。新しい物は清々しくて良いという意味なんだが、言葉尻だけ取れば女性陣から「喧嘩売っとるんかい」と。相反してフランスでは「女とワインは古い方が良い」と。経験値と教養を重視、かな。私はフランス側に1票だね。何にしても長年慣れ親しんできた物の方が落ち着ける。
0129 「お腹に宿った時点で、もう命ですばい」
昭和20年からの40年間で堕ろされた赤子は、約6000万人と。確かに人は皆事情の塊。が、自分は産んでもらい喜怒哀楽の有意義な人生を与えてもらっておきながら我が子は闇から闇へ。これも寿命と言えばそれまでだが。もし、この子達が生まれていたら現在の少子化問題は如何に。人間はやった事だけが今の答えにて。
0130 「天下りの歪みは、あちらこちらに。そこを叩かにゃ、根本的な解決には」
数年前、基礎杭打手抜き工事問題が世間を騒がしたが、この件につき知人の下請け、孫請け社長が「大手に500万円の見積りを出したら『半額250万円の8掛け、200万円でやれ』と強制。了承せんと次が貰えん。背に腹は。同じ立場だったら」と同情を。中間マージンを抑制せんと根本的な問題解決にはならんと思うが。
0131 「人が動けば、必ず白波が立つ。隠しきれる事など何一つない」
大地の下には人に必要な資源(食)が大量に、所謂宝の山。宝は昔「蔵」に保管。そこで「地」に「蔵」と書いて「地蔵」なる信仰が。この地蔵の化身が閻魔大王。大地が地蔵なら私達は全て見られとる、ということ。だから閻魔に嘘は通じんと。「その大地にゴミや唾を吐き捨てるんかい」と子供達に。この話は非常に効果あり。
0132 「欲は全てが悪いじゃない。工夫如何では生きる原動力に」
人は「寝ても寝ても、まだ寝足らん。食べても食べても、まだ食べ足らん。手に入れても入れても、まだ欲しい」と。人間ほど欲深い生き物はいない。この欲が一生涯なくなる事はない。が、上手に付き合えば、生きる原動力になるは間違いない。諺に「鹿を追う者は、山を見ず」が。我を忘れて欲を追いかけ、道に迷わぬように。
0133 「安物買いで失うはお金ばかりでない。物を大事にする心も」
お寺に奉納される仏像は、施主の思い入れから既製品はない。ノミ入れから作り始める。既製品と言えば、檀家の仕立て屋さんが「最近のお客は、安い背広を買って来ては部分仕立て直しの依頼ばかり。糸を解くと『えっ』という様な縫い方が。当に、安物買いの銭失い。その場さえ繕えておれば、そんな時代だね、何処も」と。
0134 「土俵に上らんと相撲は取れん。どんな手を使ってでも土俵に上れ」
おぎやはぎの矢作さんは英語が話せる、と嘘をつき外資系の会社に採用。寺尾聰さんは馬に乗れる、と黒澤明監督に嘘をつき採用。「へぇ、嘘も通じるばい」と。いやいや社長も監督も海千山千の方々にて、その目は節穴じゃなか。「この男なら必ず仕上げてくる」と見抜かれての事だと。初めから諦める人間では到底使い物には。
0135 「一概には言えんが、確かに大人より子供の方が環境に順応するかな」
学校保護者会で「三つ子の魂百まで、が意味する様に、幼少教育は人格形成に多大な影響を。が、専門家は「本当の人格は16歳から20歳の間に出来上がる。15歳までを基盤に自己完成の確立へと自らが歩む。自己が完成すると少々困るは、気付かず利己主義的な考え方に」と。子育てするに何か参考になりましたら」と。
0136 「知識は学問から、その知識を活かす知恵は、経験から得よ」
昨今は探知機で水脈を探し出し井戸を掘っているが、それでもなかなかに探し当てるは難しい。以前「水脈に当たらん」と嘆く社長に「私の爺様の知恵袋だよ。日中晴天のその夜、掘りたい位置を何箇所か決め、漆塗りの重箱を逆さにして置く。明朝、その重箱の内側に水滴が付いていたら、その下に水脈が」と。見事に的中した。
0137 「人の思惑が世の中の流れ。人間界は本音と建前の世界にて」
大人は子供に「お金の貸し借りをしてはならん」と言いながら、銀行でお金を借りて家を建てている。「賄賂はいかん」と言いながら、中元、歳暮のやり取りは日本の慣習。「物を盗んではいかん」と言いながら、経済はお金の奪い合いにて。さあ、この矛盾、身を正して子供に説明を。世の中は綺麗事で済まん事も包み隠さずに。
0138 「ハンバーグがミンチから作られておるを知らん高校生数多に」
檀家の息子が「高校で餅つき大会があった。蒸し上がった餅米をいきなり臼に移し先生がつき始めた。当然米は散らばり、餅にはならん。口を出したらさせられるので見て見ぬ振りを。が、もうたまらん、と友人3人を寄せて杵でもち米を捏ね上げ、つける状態にして先生に手渡した」と。完成品しか知らない時代の象徴ですな。
0139 「親になる為の準備をしっかりと。ただ産めばいいというものではない」
新婚夫婦に「国の成り立ちを表した言葉に「信長が餅をつき、秀吉が捏ね、家康が食べた」が。家庭も代々この繰り返し。米は苗を植え、夏草と格闘し、八十八夜経たんと実らん。当然土壌も植える前に耕し、肥えさせておかねばならない。子供が授かる前に、育てられる環境をしっかり整えておく事が親になる者の役目」と。
0140 「不動明王の顔は、何故にあげんかこつ恐いんか」
檀家の子供が「不動明王の顔は何故恐い」と。「人の世界でも顔は怖いのに優しい人は数多に。不動明王は人の一番厄介な喜怒哀楽を癒す仏さん。一生懸命にならんと癒せん。その必死さが顔に出とるだけ。ところで君は、あんな顔になるまで懸命に何かやった事あるかい。不動明王を見る度に自分にそう問いかけてごらん」と。
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