平成30年5月分 金剛寺住職短文法話集
「坊主の説法と結婚式のスピーチは短いほど有難い」と。但し、その短文法話の中には必ず含み言葉が。講演会でよく次の様な質問を。「法話によって参加者全員が抱える問題を網羅することが出来ますか」と。対し私は「法話は話し手より聞き手の受け取りの方が大事。法話は数学で言うところの『公式』に同じ。その話に自身が抱える問題を当てはめ、自らが解決の糸口を導き出していく為の道具にするもの。これは法話に限らず、人と人との関係全てにおいて言える事にて」と説明を。その様に理解して頂きますれば、この短文法話も何かのお役に。
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0141 「子供は親の言う通りには動かん。親のする通りに動く」
学校保護者会講演で「昨今は瀬戸物急須に水を入れ、直接コンロで沸かそうとする、また、ハンバーグがミンチから作られるを知らん、なる高校生が急増とか。人間は、知識は学問から、その知識を活かす知恵は経験からしか得られん。学校教育に不平不満や文句を言う前に、親は家庭教育を今一度見直す必要があるかと」と。
0142 「嫁いだ娘を守る手立ては唯一つ。親の抑止力」
檀家の娘が「昔から、娘は父親に似た方が幸せ、と。これって何故」と。「諸説色々。が、特に娘の結婚に関わりが深いかもな。夫婦喧嘩になった時、嫁の顔に父親の面影が見えたら婿は。所謂、抑止力だな。が、その為には恐い厳格な父親を嘘でも演じておかねば。娘の結婚相手に「この父親は怒らせたら恐ろしい」とね」とね。
0143 「知らない事に口を出し、明後日の方向の文句や講釈を」
中学校教諭陣に体罰の肯定否定を問うと「理不尽なものでなければ必要。叩かれた本人と親は身に覚えがあるから文句は言わない。騒ぐのはその場の状況だけで判断した生徒と、その話を鵜呑みにする親だけ。それでも学校内は関係者だけだから、まだ何とかなる。問題はマスコミと言葉尻の情報だけで騒ぎ立てる野次馬達」と。
0144 「満年齢よりも数え年の方が、正しい数え方かも」
数え年とは、母親の腹に宿った時点で「命」とみなし、出生と共に1歳と。これが正解ではないか、と。生後5ヶ月目に入った戌(犬)の日に腹帯を。長さは七五三参りに習い7尺5寸3分(約250センチ)、犬の安産に肖って。初誕生日にはぶっ倒し餅。男子は背負せ、わざと倒す。「家から離れない様に」と。親の願いだね。
0145 「人の人生は、順送りにて。老いて子に従うも心地よい」
近頃、私の動きをわが子の目線が追っているを感じる。段差があると即座に子供達の手が伸びてくる。完全に子供達の監視下の中にあるようだ。女房殿が「父さんは、もう10年前のキレはない、とあの子らが言ってたよ」と。口では「何やと。馬鹿にしおって」と。しかし、本心は逆にて。老いて子に従うも、そう悪くない。
0146 「老いても、まだ子育てを。親は死ぬまで親にて」
ある日突然に爺様が痴呆に。婆様の顔に小便かけるやら、警察が家まで送って来るやら、と。「とうとう爺様もきたか」と。が、半年後その爺様に呼び止められ「俺が本当に痴呆になったとでも思ったか。お前の親父、変わったろうが」と。「何ね、爺ちゃん、狂言やったんか」と驚愕。仕事中心だった父を見事家庭に振り向かせた。
0147 「癒し系の女房殿って、有難い。お寺は住職より坊守の方が大事」
お寺の奥方の呼び名を、坊守(ぼうもり)さんとか、寺庭(じてい)さんとか。お寺の庭の如く、見ているだけで心癒される雰囲気を持つ存在であれ、という願いから。私も伴侶選びはそれを基本に女房殿を。今一つは、木魚を親の仇ごとしばき倒しながら拝まんこと。如何に住職とはいえ、家の中まで仕事の延長は、ご勘弁。
0148 「病院では患者の治療が最優先では。本末転倒だね」
檀家老女が「住職さん。治療中に主治医と看護師長が別の患者のことで口論に。処方された湿布が肌に合わなかったらしく、多忙の医師に気を遣い自分の判断で別の物を。が、それも合わず、医師に指示を願うと『君が最後まで治療したらどうだ』と。何、医師が気分を害したら臨床を拒否。患者の治療が最優先じゃないの」と。
0149 「努力した人は、努力してない人と同じ結果だったとしても、後悔は少ない」
子供が授からない夫婦に「檀家で「夫に子種が無い」と診断された2組の夫婦が。内1組は「その土地を縁に人は命を」から3年もの間、氏神へ日参。もう1組は「先祖の助けを」とお寺へ10年間日参。結果2組共に子宝を。仮に授からなかったとしても「何であの時、努力を」等の後悔の念は恐らく残らなかったろうね」と。
0150 「人間関係希薄な世の中に、だね。どこを向いても」
銀行のATMで若者が処理後に通帳を凝視したままその場に数分。後ろに並んでいた爺様が「んっ」という顔で「あんた、もう終わったのか」と。対しチラ見した後、無視して立ち去ろうとする若者にいきなりMaxで「返事せんか、このボケ」と怒号を。返事しない若者、すぐキレる年寄り。現代社会の縮図を目の前で遭遇。
0151 「伝統を継承していくは大変な事」
高野山は本山金剛峯寺、各寺院の屋根はその殆どが瓦ではなく桧皮葺き(ヒノキの皮作り)。1度葺(ふ)いたら50年は持つと言われているが、必ず20年に1度はやり変えるとの事。ご察しの通りです。50年では継承者の育成が出来ないから。技術を絶やさず後世に残していくは、大変な苦労が。国を支える柱は、人にて。
0152 「病院や学校に文句を言う前に、世話になっとるが先やろ」
精神科が主流の病院へ講演に。疲れ切った顔のドクターや看護師さんに「ちょっと先生方、もうちょっと覇気ある顔をされては如何」と笑いを誘ったが、クスッ、ともせず冷めた顔で「毎日毎日うつ病患者や痴呆老人、アル中患者の相手をしてごらん。こんな顔にもなるよ」と返された。人心相手の仕事はどの分野も大変だわ。
0153 「つまずいた石ころは自分で置いたもの」
匿名の手紙が届き「俺がこうなったはあいつのせい、こいつのせい。学校のせい、会社のせいと、責任を転嫁し続けてきたが、現在その『せい』の対象は誰も周りに残っておらず、足を止めた自分だけがこの場に置き去りに。『人間死ぬまで生きとかなあかん。さあ、どう生きる』の住職の言葉に『まだ間に合う』と奮起を」と。
0154 「読む人が読めば、死ぬことも止めてくれる」
その日、自社ビルから飛び降りる決意で出勤。残りの仕事を片付けている時、偶々ネットで私の「会社内で無能扱い、常に窓際。が、家に帰れば『この幸せは、お父さんのおかげよ』と認めてくれる妻や子供達が」の法話と遭遇し自殺を思い止まった、と涙声でお礼を。大事な存在をも忘れさせるまでに、人は人を追い込むか。
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