平成30年6月分 金剛寺住職短文法話集
「坊主の説法と結婚式のスピーチは短いほど有難い」と。但し、その短文法話の中には必ず含み言葉が。講演会でよく次の様な質問を。「法話によって参加者全員が抱える問題を網羅することが出来ますか」と。対し私は「法話は話し手より聞き手の受け取りの方が大事。法話は数学で言うところの『公式』に同じ。その話に自身が抱える問題を当てはめ、自らが解決の糸口を導き出していく為の道具にするもの。これは法話に限らず、人と人との関係全てにおいて言える事にて」と説明を。その様に理解して頂きますれば、この短文法話も何かのお役に。
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0155 「過ぎたらあかん、如何なることも」
お寺でも女性陣の会話の中心は常にダイエット。「水や空気でも肥えるんだよね」の奥様方の言葉に「やっぱ食いよる。心と違うて体は正直や。ちょっと待て、その一口が豚もと、ばい」と小声で主人が。大体ふくよかな奥様の横には痩せ細った主人が。蜘蛛やカマキリも交尾中に雄を食べて栄養とし、子育てを。生物の生業だね。
0156 「嫁姑問題は、古来から、永遠のテーマにて」
娘の結婚式で泣き続けたご主人を「まったく女々しいんだから」と私の前で奥さんがボロカスに。あまりに気の毒に思ったので「まあ、でも、父ちゃんは結婚式まではメソメソしても、一旦手渡したら後はスパッ、とね。が母ちゃんときたら嫁に息子を渡した後も、何十年と息子夫婦に介入し嫁に小言を、ね」と。睨まれた。
0157 「この世には人間の物は何一つも。この身でさえも」
室町時代禅僧一休宗純は「拝借申す四大五蘊(体)、お返し申す今月今日」と。死ぬので借りていた体を、と。他に使わせてもらっている物は何かな。昨今、災害等で思い知らされる事が数多に。水も火も1週間なければ人は生きられない。空気(酸素)も太陽の恵みも。当たり前と使っている物は全て借り物。なれば、大切に。
0158 「産んで育ててもらった恩を忘れ、親の世話をせず、財産目当て」
檀家息子が「お墓の花が枯れとったぞ、と鬼の首でも取ったかの様に叔父が」と怒りを。「夏場は数日経てば「花は枯れる」を知る人はそんな文句は言わん。常日頃、お墓に足を運んでないを自ら露見してるに同じ。子供が何人おろうと親の世話をするは一人。その他は近寄りもせず、無責任に言いたか放題。ほっとけ」と息子に。
0159 「まあ、昨今流行りのお墓を捨てるよりはマシだけどね」
北九州を終の住処とした男性が相談に。「こちらの納骨堂契約を」と。「今は」「山口の菩提寺納骨堂に」「何故そこを」「遠くなるので」と。「私は年に数回、関東まで布教に。が、1度も遠いと思った事は。君は距離ではなく、心が遠のいたんじゃないかい。長年お世話になった菩提寺を、そう簡単に離檀はあかんばい」と却下。
0160 「あの人本当に信仰者かい、と疑問を持たれたら、アウト」
当山僧侶研修で「昨今、信仰人口の減少が。特に若い人達の。先輩信仰者の影響が大とするならば、困った時だけの神頼み。お経を唱える同じ口で、人の悪口や嘘八百を。手を合わせ、数珠を持つ同じ手で、人を傷付け。仏を見る同じ目で人の粗探し。説法を聞く同じ耳で人の噂話を鵜呑みに。先ず、携わる者から襟元を」と。
0161 「人間に怠け者、勤勉者がいるからには」
人類の歴史は「争い、奪い合い、殺し合い」の歴史。そうした経験を積み重ね、人間も少しは利口に。原爆投下が以来ないのもその一つ。が、人に欲がある以上、争い事がなくなる事は。弱肉強食が世の常である以上、格差社会がなくなる事も。過去の奴隷制度の教訓から、理不尽な格差は。理想と現実を常に頭において行動を。
0162 「大人の自分勝手により、犠牲は常に子供達」
檀家の男性が父親3回忌に「親が離婚するだろう、とは5歳くらいから薄々は。親夫婦の間に会話は全くなく、家族揃っての食事など殆ど記憶が。当時日々明るく振舞ってはいたが、家内が「パパの子供時代、笑ってる写真が1枚もないよ」と。11歳の時に終止符が。弟と妹には「大人の世界に口出すな」と。今に思えば」と。
0163 「何処からか来たんなら、何処かへと帰るよ」
無信心の檀家爺様が心筋梗塞で倒れ、生死の境を。意識が回復したので見舞いに。「住職。ウッと胸を押さえた瞬間に意識が。目覚めたのは18日後だが、一瞬の感覚だ。想像してみ。漆黒の闇の中、あるは意識だけ。匂いも音もない。途方に暮れ一歩も前に。不安だけが身に。死んですぐの枕経、聞こえたら、有難いかもな」と。
0164 「人は自分だけは死なん、と思っとる」
檀家独身兄弟あり。その兄がいつもの様に仕事で現場へ。脚立より顔面から落ちて血が止まらず出血死、41歳。その3年後、今度は弟が。夕刻コンビニへ行く途中、心筋梗塞で突然死、41歳。その日の朝、自分がその日に死ぬ事になろうとは、恐らく夢にも。明日の命を約束されている人間は誰1人も。限りある時間を大切に。
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0165 「口煩いお年寄りは、お寺の宝にて」
檀家爺様が「若(私)、何千坪の田畑に納屋付きの大きな家屋。裸一貫からここまで。並大抵じゃない。それが全て自分の物に。息子夫婦はそれが何もわかっとらん。少しぐらい辛抱せにゃ。若も同じだ。神輿も担いでくれる者がおるから上に乗ることが。担がれる人間が軽かったら、担ぎ甲斐がないぞ。先代の生き様に習え」と。
0166 「人間以外の生物から学ぶもの」
先日、お寺に来た親子犬を見て驚かされた。足腰の弱っている老母犬のお尻を息子犬が一段一段頭で押し上げながら石段を。それも時折、母親犬の顔を覗き込みながら。こんな状況を初めて目の当たりに。因みにクジラはわが子を天敵から守る為に夫婦の間に挟んで泳ぐとか。親への、子への愛情。どうです。見習うべき姿かな。
0167 「子は親の所有物ではない」
保護者会講演で「優等、劣等の分野は勉強だけでは。スポーツや遊びでも優劣の差は。阿弥陀経に「白色白光、青色青光、」なる教えが。「白いものを無理矢理青く光らせる必要はない。その色なりに磨き上げよ」と。人間は自分の好むものが表に現れる。趣味も服装もその一つ。親は子の特性を見極め、それを磨くが仕事」と。
0168 「物作りには、ひと手間は大事」
保護者会講演で「人を育てるは手間暇が掛かる。それを親が面倒臭がらずにやるかどうかが鍵。教師も社長も師匠も。母親の手料理もひと手間の一つ。「男性を掴むには胃袋を掴め」という言葉が。これはわが子においても同様。手間を掛けた料理を食べてきた子供の感受性は非常に豊かなものに。五感の発育に多大な影響が。
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