平成30年7月 金剛寺住職短文法話集

 「坊主の説法と結婚式のスピーチは短いほど有難い」と。但し、その短文法話の中には必ず含み言葉が。講演会でよく次の様な質問を。「法話によって参加者全員が抱える問題を網羅することが出来ますか」と。対し私は「法話は話し手より聞き手の受け取りの方が大事。法話は数学で言うところの『公式』に同じ。その話に自身が抱える問題を当てはめ、自らが解決の糸口を導き出していく為の道具にするもの。これは法話に限らず、人と人との関係全てにおいて言える事にて」と説明を。その様に理解して頂きますれば、この短文法話も何かのお役に。

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0169   「誰が結婚を人生の墓場にしたんかいな」

独身の檀家娘が「愛称占いって大事ですか」と。「相性最高で結婚し、離婚した者。最悪で結婚し、円満を築いた者。家族、親族が大いに祝福、結婚したが離婚した者。関係者が皆猛反対、を押し切って結婚、良い意味での期待外れで夫婦関係を充実させている者も」と。「なるほどね。相性は夫婦で築きあげるものか」「だな」と。

0170   「親の主観を抑えて子育てを」

15歳檀家娘が「親には内緒で。言わないで」とお寺へ。「親は口を開けば、最近の若い者は、と。これって順送りでしょ。叩けば誰でも誇りは。自分の事は棚に上げんと子育ては。わかるよ。が、時には誰かが引き摺り降ろしてくれんと。勝手に自分の夢や理想を子供に押し付けて。私の人生なのに。もう、うんざり。以上」と。

0171   「親の世話をする人は、限られた人だけ」

石川啄木の短歌に「たはむれに母を背負ひて、そのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず」が。後に身内が「啄木はそんな親思いの子供ではなかった」と暴露を。これは第三者が知る必要のなかった家庭事情かな。が、親が死んだ後で、何かと美化する子供って結構に多い。その殆どが自分を正当化しないと立場がない人間だが。

0172   「人間は十人十色。それぞれが時代に応じてこの国を」

戦国三武将を表した言葉に、信長公が「鳴かぬなら、殺してしまえホトトギス」と。秀吉公は「鳴かしてみよう」と。家康公は「鳴くまで待とう」と。対し、松下幸之助さんが放った「それもまたよし」は、今の日本に欠けている心かな。ついでにさんまさんは「鳴かぬなら、俺がしゃべるぞ」と。皆、それぞれに強い信念が。

0173   「親の人生と子供の人生は別物。押し付けはあかん」

母親が「私は私なりに今日まで一生懸命子育てを」と寺へ相談に。「その懸命さの方向が間違っていたのでは」「では、どうすれば」「良かれと信じてやってきた事でこの結果を招いたんなら、その真逆を試してみたらどうですかな、不本意でしょうが」と。結果は好転。親の主観の押し付けは、子供にとっては負担でしかない。

0174   「子供を育てる環境作りも、親の役目かな」

学校保護者会で「中国思想家「孟子」母親の「孟母三遷(もうぼさんせん)」の話は有名。孟子は、お墓の近くの家では葬式ごっこばかりを。市場の近くに引越すと、今度は商人の真似事。最期は学校の近くへ。すると学生に習い礼儀作法を取得したと。この話の教訓は、子供の成長には環境が大いに影響を及ぼす、という事かな。

0175   「縁起も担ぎ方(受け取り方)を変えれば、別物に・・・」

昔の話。住職に「何か縁起の良い言葉を」と檀家が。そこで故事を引用し「祖父母死、父母死、子死、孫死」と。不機嫌な檀家に「この順番が狂う程辛い事はないよ」と。今一つに「家の外、ぐるりと囲んだ貧乏神」と。さらに不機嫌な檀家に「福の神外へ出られず」と下の句を添えた。「幸、不幸は物の受け取り方次第だよ」と。

0176   「大手社長が、親も先祖も大事にせん人間が、人生成功させる事など、と」

父3回忌法要の時息子が「爺ちゃんが手術台で内臓を放り出された状態を見てどう思った」と。当時の事が走馬灯の様に脳裏を。「そうだな。癌は大腸、小腸、膀胱、腹膜、肝臓、肺にまで転移。檀家婆様が『私達が住職を使い殺した』と。その『私達』の中には当然父さんも」と。年忌は故人から受けた恩を忘れぬ為にする法要。

0177   「二兎を追う者は、一兎をも。が、追わない者は、何も得られん」

檀家青年が「いつも右か左か迷う事が多い」と。「基本、迷ってる時は、どちらでもいいから迷ってる事が多い。寿司が食べたかったら、迷わず寿司屋に行くべ。老齢の住職が「二つの経典を勉強する時間はわしには残ってない」と後方に放り投げて、遠くに飛んだ方を勉強したげな。迷いを断ち切る方法としては有りかも」と。

0178   「知識は学問から、その知識を活かす知恵は経験から」

釈尊の主治医が若い頃に名医の門を。弟子入り条件として提示したは「10キロ四方の土地を定め、薬にならん草花を探して持って来い」と。が、探せど探せど、これは根が、茎が、葉が、花が、と全て何かしらの薬に。数年後、落胆して戻ると名医が「お前に医者の免状を与える」と。これぞまさしく、プロの育成方法かな。

0179   「人がそう動くには、そう動くだけの理由がある」

700人以上も臨終の手伝いをさせてもらうと様々な人間模様に遭遇。特記すべき点は、親は子に恨みを持たれる様な生き方だけは絶対に避ける事。もう憎む相手はこの世にいないのに、死ぬまで子が親を恨み続ける。昨今の病院内死亡の親の遺体を「いらん」と引取り拒否するも。子に罪を作らせる様な事をさせたらあかん。

0180   「亡くなっても生きている時と同じ様に」

生前、父が法要で突如心臓疾患に。途中で私と導師を入れ代わり無事法要は終了。看病に当たったわが妻に「怒るなよ、法要前に牡丹餅を10個食べたのが悪かった」と。「何度同じ事を」と激怒されていたが、娘のない父にはそれが心地良い様で。現在、女房殿は父への仏壇お供えは必ず1個、「あっちで心臓悪くせんように」と。

0181   「真実は小説よりも奇なり。檀家さん方の生きざまは一読の価値あり」

90歳を越えた元女医さんが手紙で「住職さんの法話本、枕元に置いておき、起床と同時に手に取って適当に開き、その項に書いてある話を「今日1日気をつける事」として使わせてもらっています。「1日の計は朝にあり」ですから。人に余りの人生なんてありません。私は100歳まで生きるつもり。その為の道しるべに」と。

0182   「人は、観察すればする程、興味深いもの」

息子友人が「叔父さん。服装や髪型は飽きたら変えれば。が、刺青は。彼氏、彼女の名を体に。別れたらどうすんの。結婚も飽きるとわかってて、何故するの」と。「何や、結婚否定はそれかい。飽きんけどな。人間は年々変化を。気付けば女性は体が倍に、男性は禿散らかして。晩年女性の顔は亀に、男性は犬か猿に、だよ」と。

天徳山 金剛寺

ようこそ、中山身語正宗 天徳山 金剛寺のホームページへ。 当寺では、毎月のお参りのほかに、年に数回の大法要も行っております。 住職による法話も毎月のお参りの際に開催しております。 住職(山本英照)の著書「重いけど生きられる~小さなお寺の法話集~」発売中。