平成31年3月分 金剛寺住職短文法話集
「坊主の説法と結婚式のスピーチは短いほど有難い」と。但し、短文法話の中には必ず含み言葉が。講演会でよく次の様な質問を。「法話によって参加者全員が抱える問題を網羅することが出来ますか」と。対し私は「法話は話し手より聞き手の受け取りの方が大事。法話は数学で言うところの『方程式』に同じ。その話に自身が抱える問題を当てはめ、自らが解決の糸口を導き出していく為の道具にするもの。これは法話に限らず、人と人との関係全てにおいて言える事にて」と説明を。その様に理解して頂きますれば、この短文法話も何かのお役に。
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0280 「擦り傷だらけのお百度参り。昨年25回忌を迎えた祖母の生きざま」
祖母は還暦の年、脳内出血で左半身麻痺に。1年間の入院後、回復せぬまま退院。が、次の日から本堂内を這ってお百度参りを。絶対動かん、と診断された体を握力0から5に。引き摺りながらでも歩けるまでに回復。その間一言も不満を。戦中戦後、形振り構わず5人の子供を育てあげた根性者。「諦めるな」が婆様の口癖。
0281 「反省は、するように仕向けることが大事。子育ても同じ」
知人社長は年頭に今年の目標を100個、社員に書かせていると。書けば書く程、異文同種の懺悔が繰り返し出てくる様になると。それが今年1番の目標になると。この方策は素晴らしいね。人は正しい忠告であれ、面と向かって言われると腹が立つもの。亡き父(先代)は常に「人は教えられても身に付かん。気付かせよ」と。
0282 「喧嘩の原因は、時間や物、つまりは、限りある物の奪い合い」
夫婦間に限らず喧嘩原因の1つに時間の取り合いが。人は皆平等に1日24時間しか与えられてない。前に息子が「父さんと母さんは喧嘩しないよね。秘訣は」と質問を。「お互い自分優先じゃないもんな。同じ時間を得るにも奪い合うのと与え合うのでは全く意味が違うだろ。喧嘩原因は、限りある物の奪い合いだもんな」と。
0283 「線香立てて、ナンマイダ、誰でも出来る」
高野山に参拝した折り、ある男性が母親の写真を奥之院のご廟に向けてお参りを。同参の方々が「親思いですね」との声掛けに、頷いたその方を見てご家族の方が嫌悪感を露わに。所謂、「母死んで拝む両手があるならば、生きてる内に肩一つ揉め」と指摘される様な親不孝息子だったみたいで。いるよね、体裁だけを繕う人って。
0284 「親の七光りは光らせることが出来て、初めて七光り」
3年前に娘がワーホリに当選して英国へ。弟が「いつも姉貴は運だけは凄い」と。「まあな。確かに強運はある。だけど土俵に上がらん事には相撲は取れんよ。運でも七光りでも使える物を活かす力は必要。だが、土俵に上れたとて、勝てるかどうかは別問題。そこで力を付けにゃ番付向上は。だけど臆する心無きは凄いよ」と。
0285 「子供が気付いてないと思ったら大間違い」
檀家男性が「20年前の話。父親に浮気相手から毎日の様に偽名で電話が。当然親夫婦は離婚、私達は父親が引き取る事に。大学で東京にいた時、事前報告なしにその女性と結婚。時が流れ私は結婚、子を授かった時、初めて父親に「孫の環境にまで同じ事を押し付けたら、今度は許さんぞ」と。この言葉で父親は改心を」と。
0286 「露と落ち露と消えにしわが想い。浮世の事は夢のまた夢」
奥様がご主人を引き連れ、浮気問題でお寺へ。「これで4度目です。『その女性の所へ行く。別れてくれ』と。どうしましょうか」と。「そうね、今現在もここにいるという事は、過去3度は捨てられたんでしょ。大丈夫。自分に益がないと判断したら女性は結論が早い。戻る所はここしかないから」と。見事的中、半年後だった。
0287 「昔の仲人は、子供が30歳過ぎても独身は、親が売って回らんと買い手は付かん、と」
その筋の専門家が「人は15歳までの育ちを土台に、20歳までに考え方が確立する」と。そう言われてみれば昔の女性は、20歳前までに結婚、が主流。考え方が固まらない内に嫁いでいたから、他家の環境にも順応出来たのかな。先日他界された樹木希林さんが「女性は若い内に結婚を。分別が付いたら結婚など出来ん」と。
0288 「それその物の本質を知らない物に限って、的外れの文句を」
戦後70年も越えれば、体験を聞かせる方々が段々と。他界した檀家元将校は常々「面白いもんでな、日頃大風呂敷広げて粋がっている者に限って出陣が決まるとその前夜、わざと醤油をがぶ飲みして下痢を起こし出陣を辞退。却って物静かな人間の方が勇気があったな。その勇敢な部下の大半が戦地で散った」と、いつも涙を。
0289 「女性は生き物が違う。諦めよう、男性は。勝てる見込みはない」
本堂内で檀家女性陣の会話を聞いておると実に興味深い。1人の話が終わると、間髪入れずに前とは全く違う流れの話が始まる。なのに不思議と会話は成立を。じっくり見ていると、皆々頷いてはいるが、間違いなく人の話を聞いていない。頭の中は自分の番の話の用意を。女性が何時間も話し続けられる仕組みはこれか、と。
0290 「不本意であっても、その立場で自分を殺し、動かにゃならん人も」
檀家高校生が「後世に悪名を残す人の中には不本意に旅立った方も」と。「勝海舟さんが、行いは俺の物、批判は他人の物、俺の知った事か、と。世の中は出る杭は打たれる、出過ぎた杭は抜かれる。蝮の子は母親の腹を食い破って出てくる様に、何かを成す時には、理不尽と思われる生き方をせにゃならん事もあるんだよな」と。
0291 「1周忌、3,7,13,17,25,33回忌と。えろうあるな。恩を忘れぬため」
春彼岸には苦い思い出が。親代わりに育ててくれた祖母が、彼岸入り前日夢に出てきて「お前達は私が旅立ってすぐの頃は『もうよかぞ』というぐらい墓参りに。が、最近はとんと顔を」と哀しそうに。目が覚めて父に話すと顔色を変え「今から行くぞ」と。夢とは言え「こりゃあかん」と猛省。寺の人間がこれじゃ、ですな。
0292 「女性に謝らせようなんて、至難の業」
先般、姉弟の喧嘩仲裁で呼ばれた。些細な事で2年間会話がないと。聞けば両成敗の内容にて。弟は折れて謝罪したが姉は「今後気をつけろ」と吐き捨てた。女性は謝らんよね。納得せにゃ怒涛の如く反論。内心は非を認めても「そうですか」の一言で片付けよる。檀家夫婦も大半はこの関係かな。不思議とそれで成り立っとる。
0293 「何を迎えるにも、準備万端整えて。その環境で人間は育つ」
数年前に若い男女が「自分達は子供時代、喘息で苦しみました。子供は親の体質を受け継いで生まれてくるから」と、結婚前から2人して食生活などの体質改善に1年間取り組んだ。それが功をそうしたのか、現在3人の子はアトピーも喘息も全くなし。「親になる」とはそういう事だね。ただ産みゃいいってもんじゃないよね。
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