令和 元 年 5 月分 金剛寺住職短文法話集

 「坊主の説法と結婚式のスピーチは短いほど有難い」と。但し、短文法話の中には必ず含み言葉が。講演会でよく次の様な質問を。「法話によって参加者全員が抱える問題を網羅することが出来ますか」と。対し私は「法話は話し手より聞き手の受け取りの方が大事。法話は数学で言うところの『方程式』に同じ。その話に自身が抱える問題を当てはめ、自らが解決の糸口を導き出していく為の道具にするもの。これは法話に限らず、人と人との関係全てにおいて言える事にて」と説明を。その様に理解して頂きますれば、この短文法話も何かのお役に。

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0308   「離檀料って、いつから始まったんかいな。んんんんんっ。何か違う」

昨今「離檀料」が問題に。納骨堂の移転に伴う寺離脱に対し寺側から数百万の請求が。お寺はお金というより檀家離れの阻止が目的の様だが。が、地裁判例で離檀料上限は50万が妥当と。そもそも離檀料なんて、信仰を含め自由が基本だと。が、遺骨を道端に捨てたり、宅急便で送りつけてくるなど。どっちもどっち、かな。

0309   「保身を考えず、勇気ある判断を。事勿れ主義は、あかん」

アンデルセン童話に「裸の王様」が。詐欺師の仕立て屋が「馬鹿には見えない布で作る」と公表した事で誰もが不信感を抱くも口に出せず、遂に王様がパレードに。そんな中、1人の子供が「王様は裸だ」と。事実は必ず露見するもの。責任を負いたくないから周りの顔色を伺い、大勢の意見に従うという人間模様はいつの世も。

0310   「拙僧、女房殿には、心から感謝しております」

吉田兼好が「見て見ぬ振りを出来るのが良い妻。妻は不完全な方がいい」と。諺に「髪結いの亭主」なる言葉が。仕事を持つ女房殿の亭主は働かん人が多いと。男性は幼児から翁までプライドが服着て歩いてる。世話をせずば怒るし、し過ぎれば「窮屈」と文句を。全てを把握してないと見て見ぬ振りなど出来ん。女性は大変だわ。

0311   「目を背ける事の出来ない世の理を今こそ。逃げて事が済まない事、少なからず」

昔話は、読めば読む程に奥深い。当然、子供への読み聞かせは大事。が、今こそ大人が再読する必要あり。瘤取り爺さんは、欲が過ぎたら背負う荷が増えるを。かぐや姫は、いかに阻止しても死は免れないという生死の理を。泣いた赤鬼は、自分が幸せになるには必ず誰かを犠牲にしている事を。こうした教訓話は、必要不可欠。

0312   「残念ながら人は死ぬし、病気にもなる。大事なことは、生きざま」

信仰で人生を破綻させた人に「信仰は特別な物じゃない。特別な物にしている者がいるだけ。指導側もされる側も。釈尊が「生老病死の四苦八苦は、絶対避ける事は出来ん」と仏教開創当初から言っとるに、いつからか到底叶わない事を「叶う」と幻想の世界に。冷静になろう。釈尊もキリストも各祖師も皆、死んだんだよ」と。

0313   「人は謙虚さを忘れたらあかん。知っている事よりも知らない事の方が圧倒的に多い」

病院講演で「育ててもらった経験しかない者が親に。診てもらった経験しかない者が医師に。教えてもらった経験しかない者が教諭に。支えてもらった経験しかない者が社会人に。どの分野もまず、出発時点はど素人である、という自覚を。失敗を繰り返しながら本物に。知識は学問から、その知識を活かす知恵は経験から」と。

0314   「自分で足を止めない限り、他人がこの足は止まる事はない」

わが寺には良い意味で諦めの悪い檀家さんが多い。ある男性僧侶は他界して20年になるが、会社定年後に腰の手術をして歩けない状態に。ところがその体でお寺の130段ある石段を「リハビリや」と数か月毎日2時間掛けて這って上ってきた。晩年は87歳他界まで毎朝歩いて公園中のゴミ拾いを。いいね、諦めの悪い人。

0315   「遊び過ぎも、働き過ぎも、あかん。よって釈尊は「中道」を」

現在が不満足者は「昔は良かった」と落胆の言葉を。「苦労した昔が懐かしい」は、現在満足者の安堵の言葉。人生はイソップの「蟻とキリギリス」にて。夏怠ければ、冬報いが。これは真理にて。が、昨今では「冬に蟻宅を訪ねると、夏の働き過ぎで全員過労死」なる悲惨な替え話に。どちらにしても自分の身は自分で守るしか。

0316   「余程の馬鹿でない限り、今、女性を下に見る男性はいない。この女性、希望の職に」

一流大の女性が「就職の面接でお茶入れの有無を問われ拒否を。それが原因かは。が、悉く」と相談に。そこで徐に本人の目の前でお湯を沸かし、2人分のお茶を入れる準備を。すると慌てて「そのぐらい、私がします」と。「そうかい」と手渡した後「そのぐらい、なら、入れてあげたらどうだい」と。すると「はっ」という顔を。

0317   「健康食品を梯子する人と、信仰を梯子する人は、よく似てるよね」

健康食品被れの奥様が「これを飲むんだら癌にならん」と続けさせた主人が癌に。今度は「これは癌が治るよ」と1本数万円もする飲物を。んっ、癌にならん物を飲ませてたんじゃないの。当の主人は医師に余命を宣告されても「泣いて喚いて治るんなら何ぼでもやってやる」と平然。奥様の気が済む様にさせていただけみたい。

0318   「子育てとは、国を背負う人材を育てる事にて。特に、この先は」

亡き父は常々私に「一般に『努力をすれば夢は叶う』と言うが、そうそう叶うものじゃない。だが、その努力により知識や知恵を得て、分相応の現実方向に夢が開かれていく事がある。また、子育ては投資と思え。お金も時間も掛かるが、絶対無駄にはならん。出し惜しみをするな。子供は国の宝、しっかり育てろ」と口喧しく。

0319   「一旦覚えた贅沢を抑える事は難しい。如何にしてリセットするか」

諺に「可愛い子には、旅をさせよ。苦労、我慢をさせて育てよ」と。が、昔と違い今は難しいかな。現在この国は物が溢れかえり、工夫して活かす必要のない使い捨ての環境。信仰が貧困の場所から広がる様に、ハングリーは必死になれる要因の1つ。とはいって、故意に悪い環境を与える必要は。さあ、親は思案の見せ所かな。

0320   「何でも笑って対応出来る人って、素晴らしいね」

女房殿には度々感心させられる。同居の妻の母親が皿を割ろうと、物を壊そうと忘れようと、全く怒らん。「本来なら寝込んで手の掛かる年齢、自分で何でも出来るだけでも子供孝行。生きてるからには、何か用事がないと張り合いがない。皿は割ったら、買えば済むこと。怪我だけ気をつけてくれれば」と。女房殿は男前にて。

0321   「大工の手伝いをして、何度この老宮大工さんに怒鳴られたかな」

92歳になる宮大工の棟梁が「わしも歳を取った。そろそろかな」と。そう言いながらも「元気を貰える」と度々お寺に来ては修繕作業を。「棟梁、納骨堂の1階に永代供養堂(合祀壇)を建立せにゃならん。まだまだ永眠なんて贅沢はさせんばい。急がんでも用事が済んだら永眠させてやるから」と。「まだ、死ねんか」と笑顔で。

天徳山 金剛寺

ようこそ、中山身語正宗 天徳山 金剛寺のホームページへ。 当寺では、毎月のお参りのほかに、年に数回の大法要も行っております。 住職による法話も毎月のお参りの際に開催しております。 住職(山本英照)の著書「重いけど生きられる~小さなお寺の法話集~」発売中。