令和 元 年 6月分金剛寺住職短文法話
「坊主の説法と結婚式のスピーチは短いほど有難い」と。但し、短文法話の中には必ず含み言葉が。講演会でよく次の様な質問を。「法話によって参加者全員が抱える問題を網羅することが出来ますか」と。対し私は「法話は話し手より聞き手の受け取りの方が大事。法話は数学で言うところの『方程式』に同じ。その話に自身が抱える問題を当てはめ、自らが解決の糸口を導き出していく為の道具にするもの。これは法話に限らず、人と人との関係全てにおいて言える事にて」と説明を。その様に理解して頂きますれば、この短文法話も何かのお役に。
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0322 「女性はやっぱり生き物が違う。未だ気の弱い女性に出会った事が」
90歳の檀家婆様が乳癌の手術を。その日の夜に病室を抜け出し散歩を。注意すると「寝てばかりだと呆ける」と。今1人は86歳の婆様が脳動脈瘤の手術を。抜糸の時「よく見ろ。頭にホッチキス1つ残っとろうが。数えてたんだ。しっかりせい」と両人共、ドクターを一喝。腑抜けた私には良き手本。女性は生き物が違う。
0323 「人は支えがなくては生きられん。その支えを大事に」
中学講演で「人が絶対に出来ない事は、他人の人生を歩む事。1人で生きていく事。人間は生まれる時も第三者の手を借りて出てきた。死んだ後も第三者の手を借りんとよう片付けられん。よく巷に「人は人、自分は自分」と冷静な判断を下している風の人がいるが、もう少し冷静に考えてみよう。持ちつ持たれつ、の意味を。
0324 「人間にとっての最大の苦痛は、当り前が出来なくなった時にて」
仲が良いのか悪いのか、喧嘩三昧檀家老夫婦が。一度喧嘩すると3ヶ月は会話がない。仏壇参りに伺うと1年の内半分は険悪なムード。「あのね、あと数年もしたら、喧嘩しとうても出来んことなるばい。『もう少し優しくしとけばよかった』と片方が欠けた時に泣きなんなや。あとに残った方が後悔すっど」と。夫婦共に沈黙。
0325 「努力せず、実りが貰えるお寺があるなら教えてくれ。拙僧が行く」
何かにつけてお寺に上って来ては「歯が、頭が、お腹が」痛い、ご祈願を、と。体調不良以外でも努力は一切せず、全てが神仏頼み。ご主人、子供も大迷惑を。これじゃあかん、と「心身健全の鍛錬として、3年の間、お寺との縁を一切断ちなさい」と。悲壮な顔をしていたが、風の便りでは、今は何でもご自分で対処を、と。
0326 「確証無き話ゆえに、却って恐怖。もし、そんな事が本当にあるとしたら」
法要後の茶話会で「生まれ変わる定めが必ずあるとしたら何に」との議題が。老男性が「数日で寿命が終わる、蚊、かな。早く次にいける。逸話だが屋久島のあの縄文杉だが、閻魔大王の前で罪を認めず悪態をついた婆様の成れの果てだそうな」と。そう話すと皆々顔を見合わせながら「7200年は辛い。素直になろう」と。
0327 「人間はこの世でもあの世でも、した事の清算はさせられる、かな」
檀家子供達には常に「もし本当に閻魔大王がいたらどうする。その時に慌てても、もう遅い。死後に後悔したくなくば、親孝行しとけ」と。この方便は効き目大にて。信仰心はない、観光だ、と言っては神社仏閣には足を運ぶ。手は合わせず、賽銭打たず。おみくじは引き、内容は気にする。今後が心配なら不安材料の見直しを。
0328 「親の七光りは、光る様に仕向けるのも、親の役目」
親が偉大過ぎた為、駄目子供のレッテルを貼られた歴史上人物は数多。武田勝頼公や豊臣秀頼公などもそう。が、決して親に劣る人物ではない。親との敵対の中、切磋琢磨し、力をつけてきた武将達を相手にしなきゃならんという不運。そう考えると家康公は偉かったな。親の健在時に代を秀忠公に。時代は違ってもこれは教訓。
0329 「おおらかで神経質でない人が長生きを。怒りは寿命を縮めるかな」
第三者を巻き込み、健康食品に多額を投じる女性に「食事全般即席品の人が。野菜一切取らず、肉食中心の人が。毎日酒5合、煙草50本続けた人が。皆90歳を越え老衰で他界。健康に産んでくれた親に感謝しながら。確かに不摂生は良くない。が、決め付けて拘るも。人それぞれ受け止め方が違う。押し付けはあかんよ」と。
0330 「信仰は特別な物じゃない。特別な物にしている者がいるだけ」
法話読者の青年が「度々来る僧侶が『この家は先祖が犯した罪で子供に悪影響を与えている』と高額供養料を取って祈祷。いやいや俺の反抗は、自分達の行いは棚に上げ、先祖の責任にしている親の態度に腹が立ててるわけで。そもそも先祖の犯した罪って、何やそれ。俺達にどうしろって言うんや」と。信仰人口が減るはず。
0331 「禅問答から教えられる事は数多に。答えは全て自分の足元」
禅問答は面白い。「愚か者の絵を描け」と言われた弟子が、魚のいない海で竿に針も餌も付けず、糸を垂らしている男性の絵を描いた。それに対し師匠が「それよりも愚か者の絵を描いてやろう」と、釣竿を持つ男性の横で腕組みして見ている者の絵を描き添えた。この絵の意味するもの、身の回りにも思い当たる事例が多々。
0332 「高野山奥の院には1度は参拝を。歴史、ロマンを感じられる場所にて」
高野山奥之院参道の数十万基ある墓で最大は、信長公妹お市娘で二代将軍秀忠公ご正室お江(ごう)の五輪塔。高さは約8m。四国から石をどうやって。石は全て中を空洞にし、丸太を通して担いだと。積み上げは石を置いて土を被せ山にし、その上にまた石を載せ土を。これを繰り返し最後に土を払う。道具がなきゃ、知恵を。
0333 「人の心は感動で動く。感動させれるかどうかが、鍵」
倒産で失職した50代男性が「年齢制限で面接もしてもらえず、悉く弾かれた」と落胆を。「諦めが早い。駄目元で直接会社に足を運び、自分を売り込みなっせ」と。で、勇気出し訪問、直談判を。お礼を言いに来られたので「会社側もやる気ない若者よりも、やる気のある熟年者を取るよ。会社の利益に関わる問題だからね」と。
0334 「手抜き工事をした業者を叩くより、途中ピン撥ね人間の糾弾が先にて」
ある国で河川が氾濫し大被害。国が予算を出し「河川工事と鉄筋の橋を架けよ」と。が、請け負った大手が下請けへと丸投げ。その下請けが孫請けへと、また丸投げ。その都度ピン撥ねを繰り返し最後は「竹の橋」の予算しか残ってなかった、とその国の人達の笑い話に。さてさて、他人事かいな。被害を受けるはいつも下々。
0335 「育てられた経験しかない者は。育てた経験のない者は」
高校講演で「社長さん達が、現在社会では育てられた経験しかない未婚者が中堅管理職に。よって部下を育てる事の出来ん者が少なからず、と嘆かれてる。子育ての基本は我慢。辛抱強く成長を待つが仕事。人の主張を黙って聞く事が出来る者を大人、出来ない者を子供と。個人的印象では現在「全国民総幼稚時代」かな」と。
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