令和 元 年 8 月分 金剛寺住職による150字短文法話集
「坊主の説法と結婚式のスピーチは短いほど有難い」と。但し、短文法話の中には必ず含み言葉が。講演会でよく次の様な質問を。「法話によって参加者全員が抱える問題を網羅することが出来ますか」と。対し私は「法話は話し手より聞き手の受け取りの方が大事。法話は数学で言うところの『方程式』に同じ。その話に自身が抱える問題を当てはめ、自らが解決の糸口を導き出していく為の道具にするもの。これは法話に限らず、人と人との関係全てにおいて言える事にて」と説明を。その様に理解して頂きますれば、この短文法話も何かのお役に。
金剛寺ホームページ https://kongouji.amebaownd.com/
金剛寺ツイッター https://twitter.com/kongouji093
金剛寺フェイスブック https://www.facebook.com/天徳山-金剛寺-1543297575974719/
0350 「今ここは、まず何を、誰を、中心に考える事が大事かを」
スーパー経営40年の実績ある会長(老女)が「見ず知らずの店舗で買い物した時、店長に、暖房風が吹く先にバターやチーズは置かん方がよか。三段棚は客の目線に合わせ、下段は子供用品、中段は主婦物、上段は男性物を、と。が、聞く耳なし。案の定1年で閉店しおった。何事も一手間を嫌がっては伸びる物も伸びん」と。
0351 「信仰は遥かに非ず、実生活の中にあり」
四国霊場番外に鯖大師本坊が。このお寺では3年間鯖食を絶ち、願掛けする習わしが。謂われはお大師さんと鯖の逸話によるもの。お寺によっては酒絶ち、お茶絶ちなども。実生活の中でそれを目にした時「そうか。仏と約束し、願掛けしてたんだ」と当初の思いが再確認出来、心が引き締める事が。信仰の存在意義はここにて。
0352 「いい加減な態度に対し、返ってくるは、いい加減な対応」
四国巡拝中にお会いした特別養護老人ホームの理事長(老女)さんが「人に何かを頼む時、嘘偽りなき誠心誠意の姿を見せなければ、人は決して動いてはくれませんよね。神仏も同じだと私は思います。努力もせず、いい加減な態度の人間に、仏が力を貸してくれるとは到底思えません。私は常にこの事を従業員に口喧しく」と。
0353 「この身を助けてくれる物(人)は、一番身近な所に存在」
メーテルリンクの「青い鳥」は、ご存知「幸福は最も手近な所に存在する」と。例えば、鶯が鳴かずとも、春の訪れは草花開花で容易に知る事が出来る。が、鳴けば春に彩りを添えてくれる。さて、自分にとって「鶯」の存在とは何(誰)かな。何(誰)が心安まる環境を与えてくれているのかな。時にはわが心に問い掛けを。
0354 「明日の命を保障されている人間は、誰一人も。自分だけは死なんと」
宮城県に嫁いだ檀家女性が、震災当日の思い出を。「夫と共に1歳、3歳の娘を抱え、わが家が津波に飲み込まれていくを目の当たりにしながら、山へと駆け上がり、何とか命だけは。震災の朝、誰がその日の午後、津波で命を奪われるなんて想像を。ほんと人間は、一寸先は闇にて。今ここに、命があるに何不足、ですね」と。
0355 「人の上に立つ者の教訓。何万の家臣とその家族の命を守るためには」
家康公の教訓に「人生は荷物を背負い、坂登るが如し。勝つ事ばかりを知り、負ける事を知らねば、その害自らに及ぶ。及ばざるは過ぎたるより勝れり」と。一方、関ヶ原の戦い前は「家臣の命が掛かっとるんだ。何度賽を振っても思い通りの目が出るまで、わしは動かん」と納得いくまで画策を。トップに立つ者の心得ですね。
0356 「与えられた物を工夫して活かすしかない。不平不満を言っても始まらん」
昨年は祖母25回忌。生前常々「人には一癖、二癖。無くて七癖、ありゃ四十八癖。こうした癖もこの世で生きていく為に、天が与え下さったもの。癖は使い方によっては益にも害にも。他にも「この者なら必ず使いこなせる」と与えてくれた物に、身体、親、子供、環境、そして国もまた。活かすことが出来て、何ぼだよ」と。
0357 「災難に会う時は会うが宜し、死ぬる時は死ぬが宜し、と良寛さんが。」
頑固から孤立する男性に「昔々、良寛さんの庵へ旅人が。よくおいでに、と足洗い桶を。次の朝、これで顔を、と、昨晩の足洗い桶を。躊躇すると、早くしてくれんかいな。それで米を洗うんでな、と。人はそれを見知らずば、平気で使用出来るのに。人から先入観を取り除くは難しい。人は下らん固定観念からどれ程の損失を。
0358 「何を大切にしなきゃならんかを、今一度。失くして困る物は、なに」
今日まで貪る様に物欲のあった人間が、突如大病を患い「大便小便が普通に出るなら、食事が普通に食べれるなら、睡眠が普通に取れるなら、何千万円出しても構わん」と。常日頃全く眼中になかった「当たり前」の有難さ、これを失う事が一番の苦痛となるを初めて知る事に。病気に限らず、普通に支えてくれている物に目を。
0359 「親だけが子育てをするに非ず。指導者はその人の為に、心に鬼一匹を」
わが妻は、どの子にも平等に優しく、厳しい。20年前、息子小学生時代、お寺が級友達の遊び場に。靴揃えも初めは優しく注意を。が、幾度目かには全員の靴をお寺の庭に投げ捨て「拾うて来い」と。各返事挨拶も「聞こえないよ。大きな声で」と何度もやり直しを。時間を待たず、皆良い子に。子供は育てただけ、ですね。
0360 「天から貰った最高のプレゼントは、わが女房殿。ご主人さん。大事にしてや」
檀家で蒲鉾屋の爺様は、92歳まで現役を。側で支えてきた婆様が、脳血栓で入院。朝3時に起床し仕事開始。配達を終わらせ、次の日の準備を済ませ、昼から病院の方へ。婆様に昼食、夕食を食べさせ、夜帰宅を日課に。1日も欠かさず、1年以上もの間。「この歳まで一緒に。今は顔を見に行くが楽しみじゃ」と当時。敬服。
0361 「家の存続をを重視する家庭は現在、何割ほどあるのかな。昨今、肌で感じなくなった」
嬉しい反面「4人目も女の子か」と少し落胆夫婦に「家の存続の事かい。わからんよ。誰かが養子を引っ張ってくるかも。嫁いだ先で複数の男子に恵まれ、1人貰えるかも。そうなったらラッキーと。お前は養子を、と絶対押し付けたらあかん。家も潰れた。娘の人生も潰してしもうた、に」と。30年前の話。今は、違うかな。
0362 「現在この国は、お金さえ出せば何でも手に。そうでない時代は、願うしか」
門前小僧、習わぬ経も読むが、悪さも。拙僧の事にて。檀家婆様が度々寺で木魚を親の敵如くしばきながら念仏を。ある日、そっと近寄り頭に線香を3本立てて様子を。気付いた婆様は怒り狂い「このクソガキ、とんでもない人間になるぞ」と。今一番驚いとるは、婆様かな。「まさかあの悪ガキ(私)から供養されるとは」と。
0363 「医師は薬師如来の手足として、看護師は日光、月光の手足としての役目を担って」
退職後、心機一転起業に踏み出す若者が「心得を」と。「拙僧父は常々『清水次郎長偉いじゃない。大政、小政の声がする』と。更に『三成に過ぎたる物が2つある。島の左近(石田家家老)に佐和山の城』と。仏も皆、釈迦三尊、薬師三尊、阿弥陀三尊と必ず脇侍に2尊を。神輿も担ぎ手があればこそ。人材育成を第一に」と。
0コメント